2020 AP1

2020 AP1

2020 AP1は、アポロ群に分類される地球近傍天体です。この天体は比較的小さく、その直径はおよそ5メートル（約16フィート）と推定されています。地球のすぐ近くを公転する軌道を持っているため、地球近傍天体として分類されています。

発見とその状況

2020 AP1が発見される数日前の2020年1月2日には、地球から約0.00218天文単位、距離にしておよそ32万6千キロメートルという比較的近い距離を通過しました。天文単位（AU）は太陽から地球までの平均距離を基準とする単位で、1 AUは約1億5千万キロメートルにあたります。この接近の後、2020年1月4日にアリゾナ大学のレモン山サーベイ（Mount Lemmon Survey）によってこの天体は初めて観測され、その存在が確認されました。発見時の2020 AP1は、地球からおよそ0.006天文単位（約90万キロメートル）の距離にあり、太陽から見て134度離れた位置にありました。しかし、この天体が極めて小さなサイズであること、そして当時の夜空に明るい月が存在し、観測の妨げとなったことから、残念ながら観測は発見日のわずか1日分しか得られませんでした。

軌道への影響

2020年1月2日の地球への接近は、2020 AP1の軌道に顕著な影響を与えました。地球のような質量を持つ天体の近くを通過することで、小天体の軌道は重力によって撓められます。計算によると、この接近によって2020 AP1が太陽の周りを一周するのにかかる時間、すなわち公転周期は、以前よりも約21日間長くなったとされています。

2022年の予測と不確実性

2020 AP1は、次に太陽に最も近づく近日点を2021年12月25日頃に通過したと予測されています。そして、その後の2022年1月7日には再び地球に接近すると予測されています。この時の予測される地球からの距離は約0.01天文単位（およそ150万キロメートル）です。しかし、前述のように観測データがわずか1日分と非常に限られているため、この軌道計算には大きな不確実性が伴います。予測される接近時期にはプラスマイナス8日程度の幅があり、距離についてもプラスマイナス250万キロメートル程度の誤差の可能性があります。これにより、予測される日付の前後数日間で、計算上の最接近距離よりもさらに地球へ接近する可能性も完全に排除はできません。

アメリカ航空宇宙局（NASA）のJPL Small-Body Databaseによる線形軌道計算では、2022年の最接近時に地球中心からの最小距離がわずか0.000007天文単位（約1,000キロメートル）と算出されました。これは、地球の実際の半径（約6,371キロメートル）よりもはるかに内側に入り込む距離であり、形式的には地球の内部を通過するように見えます。しかし、これは観測データが少ない場合の初期的な線形計算によるものであり、現実の軌道運動が持つ非線形性は考慮されていません。

より高精度な計算を行い、地球への衝突リスクの高い天体を監視するSentryシステムでは、軌道伝搬における非線形性を考慮に入れた詳細な解析を行います。その結果、2020 AP1の軌道は予測される最接近の時刻に地球と実際に交差するものではないと判断されました。このため、2020 AP1は地球衝突リスクのある天体としてSentry Risk Tableにはリストアップされていません。これは、計算上の最小距離が地球半径より小さく見えても、実際の軌道は地球の存在範囲を回避していることを意味します。

2020 AP1のように小さく、短い観測期間しか得られなかった地球近傍天体の軌道計算は、常に大きな不確実性を伴います。しかし、その限られたデータから得られる情報を基に、将来の接近や潜在的なリスクを評価するための高度な計算が行われています。これは、地球の安全を守る上で重要な取り組みの一つです。

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