2020 LD

小惑星2020 LD

小惑星「2020 LD」は、地球に比較的近い軌道を周回する地球近傍小惑星の一つであり、アポロ群に分類されます。その推定直径はおよそ140メートル（約460フィート）です。このようなサイズの天体は、地球への接近という点で注目されることがあります。

この小惑星は、2020年6月7日に発見されました。発見時、地球からの距離は約0.03天文単位、キロメートル換算でおよそ450万キロメートル（約280万マイル）でした。興味深い点として、2019年の11月以降、太陽のまぶしさによって観測が妨げられており、発見に至るまでその存在や接近が捉えられなかったことが挙げられます。

特に注目すべきは、2020年における地球への最接近です。2020年6月5日、2020 LDは地球から約0.002天文単位、すなわち約30万キロメートル（約19万マイル）の距離まで接近しました。これは、地球と月の平均距離（約38万キロメートル）よりも内側にあたる軌道です。この時の最接近距離には、およそ±1000キロメートル程度の誤差があるとされています。

この2020年6月の接近は、いくつかの点で特筆されます。まず、月の軌道よりも近くまで地球に接近した小惑星の中で、2020年中に観測されたものとしては最大のサイズを持つ天体でした。さらに、おそらく2011年11月に地球へ接近した小惑星「(308635) 2005 YU」以降で、これほど大きな天体が月の軌道の内側を通過した例はないと考えられています。この事実からも、2020 LDの接近がいかに稀な出来事であったかがうかがえます。

2020 LDは地球だけでなく、水星、金星、火星といった他の内惑星にも接近する軌道を持っています。小惑星の軌道計算は、観測期間（観測アーク）が長いほど精度が高まりますが、発見直後の短い期間（この場合は約6日間）の観測に基づく計算では、過去や未来の軌道予測には不確実性が伴います。そのような短い観測アークに基づいた初期の計算では、例えば1918年6月には地球から約0.00008天文単位（約1.2万キロメートル、約7400マイル）という非常に近い距離を通過した可能性や、2024年4月には金星から約0.0001天文単位（約1.5万キロメートル、約9300マイル）の距離を通過する可能性があることも示唆されました。ただし、これらは初期の限られたデータに基づく推測であり、その後の継続的な観測によって軌道情報は更新されていきます。

アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用する地球近傍天体の監視システム「セントリー」は、既知の小惑星の軌道計算から将来の地球衝突リスクを評価しています。2020 LDに関しても、初期の約6.7日間の観測データに基づいて分析が行われました。その結果、セントリーによる評価では、2109年6月7日に地球に影響を与える可能性が、1100万分の1という極めて低い確率で示されています。このようなリスク評価も、データの蓄積によって精度が向上していきます。

地球近傍小惑星の中には、2020 LDと同様のサイズを持つ天体も存在します。例えば、小惑星「(501647) 2014 SD」も同程度の大きさと推定されています。これらの天体の発見と追跡は、地球への潜在的なリスクを把握する上で非常に重要です。

2020 LDの事例は、地球近傍天体の観測と軌道予測の重要性を改めて示すものです。特に、比較的大きな天体が事前の観測が難しい状況で接近する可能性もあることから、継続的なサーベイと技術開発が求められています。関連する用語としては、「潜在的に危険な小惑星（PHA）」や、「地球に月までの距離以内に接近する天体」などがあります。2020 LDはサイズ的にはPHAの基準（通常140m以上）を満たしますが、軌道によってはPHAに分類されない場合もあります。その詳細な分類や軌道情報は、JPL Small-Body Databaseなどの公開データベースで確認することができます。

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