2020年のテレビ (日本)

2020年、日本のテレビ業界は新型コロナウイルスのパンデミックにより、未曽有の事態に直面しました。政府による緊急事態宣言や外出自粛要請、学校の一斉休校といった社会状況の急変は、各局の番組制作や編成に広範な影響を及ぼしました。

スタジオ収録は中止・延期が相次ぎ、無観客での進行やリモート出演の導入、ロケの中止、過去の放送回を活用した再放送や総集編の編成など、多くの番組が柔軟な対応を迫られました。特に、春の選抜高校野球や夏の甲子園、東京オリンピック・パラリンピックの延期、プロ野球開幕の大幅な遅延といった大型スポーツイベントの中止・延期は、スポーツ関連番組や中継計画に大きな打撃を与えました。NHKの長寿番組『NHKのど自慢』やTBSの大型特番『オールスター感謝祭』のように、観客を入れて実施する形式の番組は中止や無観客での対応を余儀なくされました。

一方で、感染拡大が深刻化するにつれて、テレビの報道・情報番組の役割は一層重要になりました。感染状況や予防策、医療現場の状況など、最新情報を迅速かつ正確に伝えるための放送時間の拡大や、専門家を交えた解説、討論などが頻繁に行われました。特に、緊急事態宣言の発出時や首相、都道府県知事による記者会見などの際には、各局が臨時の報道特別番組を編成し、国民への情報提供に努めました。

また、この年は例年になく多くの著名人の訃報が相次ぎました。志村けんさん、野村克也さん、岡江久美子さん、渡哲也さん、筒美京平さんといったテレビ界や芸能界に貢献した方々の死去に際しては、多くの番組で追悼企画や特別番組が放送され、生前の功績を偲びました。

番組編成自体にも大きな変化が見られました。長寿番組の中には、出演者の降板に伴うアシスタントや司会の交代、リニューアルが行われたものもありました。また、惜しまれつつも放送を終了した番組も少なくありませんでした。その一方で、時世に合わせた新しい企画や、人気タレントを起用した新番組、過去に好評だった番組の復活なども試みられ、視聴者のニーズに応えようとする動きも見られました。

テレビ局の顔となるキャスターやアナウンサーの動きも活発でした。女性アナウンサーの産休入りに伴う一時的な担当交代や、産休からの復帰、あるいは退職してフリーアナウンサーとして活動を開始するケースも目立ちました。局アナウンサーの結婚発表も相次ぎ、個人的な出来事も話題となりました。

技術や配信サービスの面では、NHKによる総合テレビ・Eテレの常時同時配信・見逃し配信サービス「NHKプラス」の開始や、テレビ朝日とKDDIが共同で立ち上げた動画配信プラットフォーム「TELASA」のサービス開始など、オンライン配信分野の強化が進みました。また、AIアナウンサーの導入など、新しいテクノロジーを報道に取り入れる試みも行われました。

放送内容や制作体制に関連する倫理的な問題や不祥事も発生しました。BPO（放送倫理・番組向上機構）では、一部の番組内容に関する審議が行われ、放送倫理違反と判断されるケースも見られました。また、番組出演者の不祥事による降板、局アナウンサーの逮捕、番組内での情報誤りによる謝罪なども発生し、放送局の信頼性や責任が改めて問われる場面がありました。

全体を振り返ると、2020年の日本のテレビ業界は、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の危機に直面し、その影響を強く受けた一年でした。しかし、こうした困難な状況下でも、国民に正確な情報を伝え、エンターテイメントを提供し、社会の不安や閉塞感を和らげようとする様々な試みが行われました。リモート制作の普及やオンライン配信の進化など、新しい技術やサービスの活用が進み、今後のテレビのあり方を模索する動きが加速した年であったと言えるでしょう。

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