2020年ミャンマー総選挙

2020年ミャンマー総選挙

2020年ミャンマー総選挙（ビルマ語: အထွေထွေ ရွေးကောက်ပွဲ၊ ၂၀၂၀）は、ミャンマー連邦共和国において2020年11月8日に実施された、同国の最高立法機関である連邦議会を構成する議員を選出するための重要な国政選挙です。

この総選挙は、ミャンマーにおける民主化プロセスの継続を示すものとして、国内外から大きな関心を集めました。連邦議会は、国民の民意を反映する二院制の議会であり、上院にあたる民族代表院と下院にあたる人民代表院から構成されています。この選挙では、これらの両院の議員が、全国の選挙区において有権者による直接投票によって選ばれることとなっていました。

選挙結果

投票および開票作業を経て確定した選挙結果は、当時の政権与党であり、国家顧問であるアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟（NLD）が、圧倒的な勝利を収めるというものでした。NLDは、民族代表院および人民代表院の両院において、改選対象となった議席の大多数を獲得し、引き続き議会内で強固な多数派を形成することに成功しました。この結果は、2015年の総選挙に続くNLDの大勝であり、当時のNLD政権に対する国民の高い支持が改めて示されたものと広く認識されました。平和的な選挙プロセスを経て示された国民の意思は、ミャンマーにおける民主主義の定着に向けた一歩となることが期待されていました。

その後の政治情勢と選挙結果の無効化

しかしながら、この民主的な選挙結果がもたらした政情の安定は、短命に終わりました。選挙実施からわずか3ヶ月弱が経過した2021年2月1日、ミャンマー国軍は、2020年総選挙における広範な不正行為があったとする一方的な主張を根拠に、軍事クーデターを決行しました。国軍は、アウンサンスーチー氏をはじめとするNLD政権の指導者層や選挙管理委員会の関係者などを拘束し、非常事態を宣言して、軍事的な力によって政権を掌握しました。

国軍による政権掌握後も、2020年総選挙の有効性を巡る議論は続きました。そして、クーデター発生から約半年後、2021年7月26日、国軍によって再編された連邦選挙管理委員会は、2020年総選挙について「選挙全体が自由かつ公正に執行されなかった」と公式に断定し、その選挙結果を全面的に無効とする声明を発表しました。この無効化の理由として、選挙人名簿の不備や重複登録、投票における不正行為、開票作業の問題点などが国軍側によって主張されましたが、これらの主張については独立した第三者機関による検証が十分に行われていません。

国民の投票という民主的な手段によって示された意思を、国軍が一方的に無効としたこの決定は、ミャンマー国内の民主化運動勢力はもとより、国際社会からも強い非難を浴びました。この選挙結果の無効化は、2021年2月のクーデターと並び、ミャンマーの民主化プロセスにとって決定的な後退を意味する出来事として、現代ミャンマー史において極めて重要な位置づけがされています。

2020年ミャンマー総選挙は、国民の意思が明確に示された機会であったにもかかわらず、その結果が武力によって覆され、無効化されたという事実によって、ミャンマーが直面する政治的な困難と、民主主義の追求における課題を強く浮き彫りにしています。この選挙およびそれに続く一連の出来事は、現在のミャンマーの不安定な政治情勢を理解する上で不可欠な要素となっています。

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