2024年パリオリンピックのブレイキン競技

2024年パリオリンピック ブレイキン競技

2024年の夏の祭典、パリオリンピックにおいて、ストリートダンスの一種であるブレイキンが、ダンススポーツとして初めてオリンピック競技の舞台に登場しました。この歴史的な瞬間を飾った競技は、世界ダンススポーツ連盟（WDSF）の管轄のもと、追加種目として開催されました。

決定までの経緯と位置づけ

ブレイキンのオリンピック種目採用は、2019年6月25日に開催された国際オリンピック委員会（IOC）総会で正式に決定されました。これは、既に有力候補とされていたスポーツクライミング、サーフィン、スケートボードといった競技と同時に承認されたものです。ブレイキンが初めての採用となったため、オリンピック憲章における通常規定（前回大会の実績に基づく種目構成決定）の対象外として特例で実施が認められました。しかし、その後の2023年10月のIOC総会では、次の2028年ロサンゼルスオリンピックでの実施競技から外れることが決定しており、パリ大会が一旦の集大成となりました。

競技会場と運営

パリオリンピックのブレイキン競技は、市内の象徴的な場所であるコンコルド広場に設けられた特設会場、「コンコルド・アーバンパーク」で行われました。この会場は、ブレイキンのほか、BMXフリースタイルやスケートボードといったアーバンスポーツが集まる拠点となりました。競技の開始を告げる伝統的な儀式「トロワ・ク」（杖を3回突く）は、著名なラッパーであるスヌープ・ドッグ氏によって行われ、大いに注目を集めました。競技の運営は、パフォーマンスを評価する9名の審査員に加え、会場の雰囲気を盛り上げる2名のDJと、進行役を務める2名のMCによって担われました。

競技中に起きた出来事

ブレイキン競技の初舞台では、いくつかの印象的な出来事がありました。女子（Bガール）の予備予選に出場したアフガニスタン難民選手団のマニジャ・タラシュ選手（ダンサー名：TALASH）は、演技中に「FREE AFGHAN WOMEN（アフガニスタンの女性を解放せよ）」と書かれた青いケープを広げました。これは、オリンピック憲章が禁じる政治的メッセージの発信とみなされ、残念ながら彼女は失格処分となりました。

また、オーストラリア代表のレイチェル・ガン選手も話題となりました。予選ラウンドで0点を獲得し敗退した彼女の独特なパフォーマンスやユニフォームは、一部で非難の対象となり、メディアでも取り上げられました。これに対し、オーストラリア選手団や同国のオリンピック委員会は、選手への擁護声明を発表する事態に至りました。

出場選手の選考プロセス

パリオリンピックのブレイキン競技に出場できるのは、2008年12月31日以前に生まれた選手に限定されました。各国・地域からは、男女それぞれ最大2名までが参加可能で、全体では男子16名、女子は難民選手団から1名が追加され合計17名が出場しました。選手たちは多様なルートで出場権を獲得しました。

主な選考方法としては、2023年WDSF世界選手権の優勝者、各大陸予選の優勝者（アジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニア、アメリカ大陸）に与えられる男女各5名の枠（重複時は次点者）、そして2024年5月と6月に開催された五輪予選シリーズの上位者（男女各7名）が挙げられます。これらの枠に加え、開催国フランスに男女各最低1名、ユニバーサリティ枠として男女各2名の枠が確保され、さらに難民選手団から女子1名の参加が認められました。

このように、世界選手権、大陸予選、五輪予選シリーズといった競技成績に基づく選考に加え、開催国枠、ユニバーサリティ枠、そして難民選手団といった特別な枠が設けられ、多様なバックグラウンドを持つ選手たちがパリオリンピックという歴史的な舞台に立つこととなりました。

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