203号室の尽子さん

『203号室の尽子さん』（203ごうしつのじんこさん）は、漫画家・山田也による日本の作品です。秋田書店が発行する月刊漫画雑誌『ミステリーボニータ』において、2007年8月号から2009年10月号にかけて断続的に連載され、全13話が発表されました。本作はその後、全3巻の単行本としてまとめられています。

あらすじ

物語の中心人物は、高校生の兵藤尽子です。彼女は近所でも評判の美少女であり、見た目はごく普通の女子高生です。しかし、尽子には二つの並外れた特徴がありました。一つは、周囲が驚くほどの桁外れな大食いであること。そしてもう一つは、この世に未練を残し彷徨う霊たちと会話ができるという、強力な霊能力の持ち主であることです。彼女の自宅である203号室には、様々な理由で成仏できずにいる霊たちが次々と訪れます。尽子は、彼らが抱える悩みや心残りに耳を傾け、その魂が無事に安らかになれるよう、相談に乗ったり、時には説得を試みたりしながら日々を過ごします。

登場人物

兵藤尽子（ひょうどうじんこ）
本作の主人公である高校2年生。容姿端麗で知られていますが、特筆すべきは卓越した霊能力と食欲です。霊と対話する際には非常に体力を消耗するため、それを補うかのように常に何かを口にしています。その食欲は常軌を逸しており、地域の飲食店ではラーメン10人前をあっという間に完食したり、蕎麦120杯の新記録を打ち立てるなど、数々の驚異的な食伝説を残しています。一家は3人家族であるにも関わらず、家計における食費の割合が大家族並みに高いという母親の悩みに気づいてからは、自身の食欲を抑えようと空腹に耐えることもあり、お腹を鳴らす様子も描かれています。物語の中で門脇に想いを寄せるようになってからは、大食いであることに少なからずコンプレックスを感じ始めるようになります。

小橋耀介（こはしようすけ）
尽子とは1歳年下の幼馴染です。長年にわたり尽子に対してひそかに好意を抱いています。

沼田京子（ぬまたきょうこ）
尽子のクラスメイトで、千葉から転校してきました。尽子が以前見かけた、不気味な目つきの「死神」のような人物と瓜二つの外見をしています。本人曰く、これは母親譲りの容貌とのこと。熱心なオカルトマニアであり、自身には霊能力が備わっていると固く信じていますが、その強い思い込みが結果として低級な霊を引き寄せてしまい、常に陰鬱な雰囲気を漂わせています。霊との関わりにおいては、尽子に対して「素人は黙ってなさい」と忠告するなど、自称霊能者としてのプライドを見せます。

福耳さん（ふくみみ）
尽子の自宅である203号室を頻繁に訪れる謎めいた男性。特徴的な立派な福耳を持っています。彼が尽子の曾祖父である可能性も示唆されていますが、本人は名前を尋ねられても、偽名を名乗ったり話をはぐらかしたりして正体を明確にしません。しかし、尽子が困難な状況に陥った際には必ず駆けつけ、救いの手を差し伸べます。幼い頃から霊体と会話できたようで、道に迷っている霊を尽子に紹介することもあります。

テンマ
ある日突然行方不明となり、遺体も見つからなかった少年霊です。まだ幼い妹・ミハナのことを深く案じており、心配なあまり様々な人間に憑依しては妹の様子を確認していました。尽子と福耳の協力によって遺体が発見され、ようやく成仏できる状況になった後も、妹を見守り続けることを選びます。時折、霊的な事件などで尽子に協力することもあります。彼は尽子のことを独特なニックネームで呼びます。

篠原マリカ（しのはらマリカ）
尽子の2歳年上の従姉にあたります。大学生になり、名古屋から上京してきました。外見は尽子に非常によく似ています。尽子と同様に霊を見たり話したりする能力を持っていますが、この力のせいで過去にいじめられた経験から、霊の存在そのものを深く憎んでいます。

門脇匡（かどわきたすく）
黒洲高校の2年生です。親友である田村が行方不明になったことをきっかけに、彼を探すために心霊研究会に入部し、そこで尽子と出会います。当初は霊の存在に対して懐疑的でしたが、尽子と関わる中で、亡き母親の温もりを霊的な形で感じることができ、霊の存在を信じるようになります。尽子に対して好意を寄せている節があります。

田村（たむら）
門脇の親友。母子家庭で育ち、病弱な母親を懸命に支える孝行息子です。憑依体質を持っており、突然話し方や人格が変化してしまうことがあります。彼もまた、尽子に惹かれている様子が描かれています。

書誌情報

山田也『203号室の尽子さん』《秋田書店・ボニータコミックス》

1. 2008年 5月16日発売、ISBN 978-4-253-09755-0
2. 2009年 1月16日発売、ISBN 978-4-253-09756-7
3. 2009年 11月16日発売、ISBN 978-4-253-09757-4

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