24の前奏曲 (ショスタコーヴィチ)

ドミートリイ・ショスタコーヴィチによる『24の前奏曲 作品34』は、ピアノのための楽曲集として知られています。この作品は、先行する偉大な作曲家フレデリック・ショパンが手がけた同名の前奏曲集に倣う形で構想されました。ショスタコーヴィチが前奏曲集という形式に取り組むのは、彼が音楽院時代に作曲した初期の作品『5つの前奏曲』以来のことでした。

このピアノ曲集は、ショスタコーヴィチの主要なオペラ作品である『ムツェンスク郡のマクベス夫人 作品29』が完成を見た直後の、1932年12月30日から1933年3月2日にかけて集中的に作曲されました。資料によれば、驚くべき速さで、およそ1日に1曲というペースで書き上げられたと伝えられています。後の時代に作曲される、よりアカデミックで厳格なスタイルの『24の前奏曲とフーガ』と同様に、長調と短調の全ての調性が各曲に割り当てられていますが、本作は各曲が比較的自由な性格を持つ小品として構成されています。

発表当時、この前奏曲集は必ずしも大きな注目を集めるには至りませんでした。その理由としては、同時期にショスタコーヴィチが発表したオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』やバレエ音楽『明るい小川』がソヴィエトのプラウダ紙による厳しい批判の対象となっていた時期と重なったこと、また、大規模なソナタなどに比べてピアノ独奏曲として比較的地味な印象を与えたことなどが挙げられます。しかし、本作はアレクサンドル・スクリャービンやセルゲイ・ラフマニノフといったロシアの偉大なピアノ作曲家たちの伝統を受け継ぐ重要な作品として、その音楽的な価値は高く評価されました。

『24の前奏曲 作品34』の全曲初演は、作曲が完了した年の1933年5月24日にモスクワで行われました。特筆すべきは、この初演をショスタコーヴィチ自身がピアニストとして行ったことです。若き日に国際的なショパン・コンクールで入賞を逃した経験から、一時期ピアニストとしての活動からやや遠ざかっていたショスタコーヴィチでしたが、この前奏曲集や同時期に作曲されたピアノ協奏曲第1番のような自作の発表と演奏を通じて、再び積極的に舞台に立つようになります。本作は、ピアニストとしての彼のレパートリーにおいても重要な位置を占めることとなりました。

この曲集は、提示された調性の順番で24曲から構成されています。ショパンの前奏曲に倣う形ではありますが、楽曲の隅々にショスタコーヴィチ独自の音楽語法が息づいています。時にショパンを思わせる抒情的なメロディやハーモニーが登場する一方で、全体としては彼の初期のピアノ作品、例えば『3つの幻想的な舞曲』にも通じるような、どこか皮肉めいた、あるいは色彩豊かで独特の雰囲気に満たされています。各曲は短いながらも多様なキャラクターを持ち、軽妙なワルツ風の曲から、憂鬱で内省的な曲、あるいはユーモラスで奇妙な雰囲気を持つ曲まで、ショスタコーヴィチの多彩な音楽性が凝縮されています。

関連作品としては、後に作曲されたより大規模で対位法的な『24の前奏曲とフーガ』があり、これは本作と同様に全調性による前奏曲集ですが、その性格は大きく異なります。また、直接的な範となったショパンの『24の前奏曲』も、本作を理解する上で重要な対比となるでしょう。

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