2MASS J21265040-8140293

2MASS J21265040-8140293は、地球からおよそ80.7光年離れた宇宙空間に位置する天体です。正式名称は非常に長いですが、通常は短く略して2MASS J2126-8140、あるいは単に2MASS J2126と呼ばれます。この天体は、TYC 9486-927-1というスペクトル型M2の小さな赤色矮星の周囲を公転しており、太陽系外惑星、または褐色矮星に分類されると考えられています。

この天体の存在は、2009年に最初に確認されました。しかし、発見当初は主星の重力に束縛されていない、宇宙空間を単独で漂う「自由浮遊惑星」か、あるいは恒星になりきれなかった天体である「褐色矮星」のいずれかであると考えられていました。その後の詳しい観測と分析が進み、2016年1月にこの天体がTYC 9486-927-1の明確な伴星であることが判明しました。

2MASS J2126の最も注目すべき特徴の一つは、主星からの距離と公転周期の長さです。この天体は、主星から驚くほど離れた、約6900天文単位（AU）もの距離を置いて公転しています。これは、太陽から最も遠い惑星である海王星と太陽の間の距離の約230倍に相当します。これほど離れた軌道を周回するため、1回の公転にかかる時間は約90万年という途方もなく長いものとなります。2016年の確認当時、これだけ主星から離れており、かつ公転周期が長いことが確定している太陽系外惑星や褐色矮星の伴星は他に例がなく、極めて特異な存在として認識されました。あまりにも公転周期が長すぎるため、この天体が誕生してから主星の周りを巡った回数は、わずか50回程度にすぎないと推測されています。

2MASS J2126の物理的な性質を見てみると、その質量は木星のおよそ11.6倍から15倍と推定されています。この質量範囲は、惑星と褐色矮星を区別する際の境界線上に位置するため、天文学者の間でも惑星と呼ぶべきか、褐色矮星と呼ぶべきか議論が分かれることがあります。スペクトル分類はL3型を示しており、これは典型的な褐色矮星に見られる特徴です。表面温度は約1800ケルビンと比較的高温ですが、天体の推定年齢が1000万年から1億5000万年と比較的若いことから、形成時に蓄えられた熱がまだ多く残っているためと考えられています。

このように、2MASS J2126は、その極端に離れた軌道と長い公転周期、そして惑星と褐色矮星の境界に位置する質量といった、いくつかの点で天文学的に非常に興味深い天体です。このような伴星系の存在は、惑星系や褐色矮星系の形成メカニズムについて新たな知見をもたらす可能性を秘めています。

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