3つの幻想的な舞曲

概要

「3つの幻想的な舞曲」作品5は、ロシアの作曲家ドミートリイ・ショスタコーヴィチが手掛けた初期の代表的なピアノ作品です。原題はロシア語で「3 Фантастических танца」と記され、「3つの幻想的舞曲」という別称でも親しまれています。

この作品は、ショスタコーヴィチがまだレニングラード音楽院で作曲を学んでいた若き日に創作されました。具体的には1920年の12月4日に完成しており、これは彼のごく初期の作品群の中でも特に重要な位置を占めています。特筆すべきは、これがショスタコーヴィチの作品として最初に出版されたものであるという点です。音楽院在学中には、これ以外にも「5つの前奏曲」といった小品が生み出されていました。

本作は、ショスタコーヴィチと同じく音楽院でニコラーエフ教授に師事していたピアニスト、ヨシフ・シュヴァルツに献呈されました。そして、そのシュヴァルツによって作品は初めて公の場で演奏されました。当時、ショスタコーヴィチ自身も将来有望な若手ピアニストとして注目されており、彼は自身の演奏会プログラムにこの「3つの幻想的な舞曲」をしばしば取り入れ、自ら演奏する機会も多くありました。

発表されるやいなや、この作品はショスタコーヴィチの作品の中でも早い時期から聴衆や批評家から好評を博しました。その魅力的な旋律とリズムは多くの人々を惹きつけ、ピアノ原曲にとどまらず、ヴァイオリンとピアノのための編曲など、様々な楽器編成で演奏されるようになり、広く親しまれています。さらに、1920年代には著名な舞踏家イサドラ・ダンカンの門下生であったマリア・ポーンナが、ショスタコーヴィチ自身のピアノ伴奏に合わせてこの曲で踊り、大変な評判を呼んだというエピソードも残されています。これは、当時の芸術分野におけるジャンルを超えた交流を示す興味深い事例と言えるでしょう。

公式な初演とされているのは1925年3月20日に行われた演奏会です。この時はショスタコーヴィチ自身がピアノを演奏しました。この演奏会は、彼の作品のみで構成された一種の商業演奏会であり、「3つの幻想的な舞曲」の他にも初期の傑作であるピアノ三重奏曲第1番などが演奏されました。また、ショスタコーヴィチの姉であるマリーヤもこの演奏会に出演していたことが伝えられています。

構成

この作品は、以下の3つの独立した小品から構成されています。全曲を通しての演奏時間は、およそ3分程度と非常に短いながらも、ショスタコーヴィチの初期の様式や才能が凝縮されています。

1. 第1曲 アレグレット (Allegretto)
2. 第2曲 アンダンティーノ-アレグレット (Andantino – Allegretto)
3. 第3曲 アレグレット (Allegretto)

録音

「3つの幻想的な舞曲」は、その親しみやすさから多くのピアニストによって録音されています。特に貴重なのは、作曲者であるショスタコーヴィチ自身による演奏が少なくとも3種類の録音として現在も残されていることです。これにより、作曲家自身が意図した演奏スタイルを知る手がかりとなります。また、現代を代表するピアニストの一人であるウラディーミル・アシュケナージもこの作品を録音しており、広く聴かれています。

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