3つの演奏会用練習曲

『3つの演奏会用練習曲』（Trois études de concert, S.144/R.5）は、フランツ・リストが作曲したピアノ曲集です。1845年頃に着手され、1848年までに作曲、1849年に出版されました。リストの叔父であるエドゥアルト・リストに献呈されています。

この曲集は、単なる技巧練習に留まらず、豊かな音楽性と詩情を兼ね備えている点が特徴です。そのため、演奏会でも好んで取り上げられます。各曲には、出版時に「悲しみ」「軽やかさ」「ため息」という標題が付けられ、現在でも広く用いられています。

各曲の詳細

第1曲「悲しみ」 (Il lamento)

アレグロ・カンタービレ、変イ長調、4/4拍子で演奏されます。この曲は、旋律と伴奏を明確に弾き分ける技術を要求されます。即興的な序奏に続き、主題が断片的に現れ、様々な調へと変化していきます。長調でありながら、減七の和音や「ため息」のモチーフが多用され、メランコリックな雰囲気を醸し出しています。

第2曲「軽やかさ」 (La leggierezza)

クアジ・アレグレット、ヘ短調、3/4拍子で演奏されます。この曲は、右手の繊細なコントロールを鍛えるための練習曲です。三連符の伴奏に乗せて、主題が様々な形で変奏されていきます。中盤以降には、ショパンの練習曲Op.25-2を彷彿とさせる、急速な音形が現れます。

第3曲「ため息」 (Un Sospiro)

アレグロ・アフェットゥオーソ、変ニ長調、4/4拍子で演奏されます。三部形式で構成され、アルペジオと両手による旋律の受け渡しが特徴的です。3曲の中でも特に演奏される機会が多く、リストの作品の中でも非常に有名な部類に入ります。発表当時から人気が高く、弟子の演奏用に書かれたカデンツァが複数残されています。流れるような旋律が美しく、後半には「タールベルクの三本の手」の技法が用いられています。また、un poco agitatoの指示がある箇所にも注目したい点です。音符の向きによって左右の手を交互に使う必要があり、演奏の難易度を高めています。

参考文献

『リスト: 演奏会用練習曲集』解説、全音楽譜出版社、2005（野本由紀夫）
福田弥『作曲家・人と作品　リスト』音楽之友社、2005
"Liszt: Drei Konzertetüden" (Henle, HN481) 解説 (Rena Charnin Mueller, Wiltrud Haug-Freienstein, 1998)

外部リンク

3つの演奏会用練習曲 S.144の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
* リスト: 3つの演奏会用練習曲 - ピティナ・ピアノ曲事典

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