4年間の歩哨兵勤務

『4年間の歩哨兵勤務』D190

『4年間の歩哨兵勤務』（Der vierjährige Posten、よねんかんのほしょうへいきんむ）は、オーストリアの作曲家フランツ・シューベルトが手がけた一幕物のオペラ、あるいはジングシュピールです。作品カタログ番号はD190。日本では『4年間の歩哨生活』という表記も見られます。

概要

本作は、シューベルトが18歳であった1815年の7月に作曲されました。この年は、シューベルトが生涯でもっとも多産であった時期の一つであり、数多くの歌曲やその他のジャンルの作品が生み出されています。『4年間の歩哨兵勤務』も、そうした旺盛な創作活動の中で生まれた作品と言えます。具体的な作曲の動機については明らかではありませんが、若きシューベルトが劇音楽に強い関心を寄せていた時期に書かれた「若書き」の作品として位置づけられています。伝えられるところによれば、このオペラは驚異的な速さで、わずか10日間という短い期間で書き上げられたとされており、当時のシューベルトのひらめきと集中力の高さがうかがえます。

作品は、一つの幕の中に序曲を含む全9曲（序曲と8曲）が収められた、比較的規模の小さなオペラです。ジングシュピールは、歌唱部分と台詞部分が交互に進行するドイツ語圏の音楽劇の形式であり、本作もこの形式に則っています。

台本は、詩人としても知られるテオドール・ケルナーによって書かれました。物語の舞台は、1809年頃のドイツにある国境の町とされています。当時の時代背景が物語にどのように影響を与えているかは、作品の内容に関わる部分です。

登場人物

物語に登場する主な人物は以下の通りです。

ドゥバル（テノール）
コルランド（バス）
* ジュリア（ソプラノ）

これらの主要人物に加えて、劇中には村人たちや兵士たちが登場し、合唱を担っています。

上演史と現状

『4年間の歩哨兵勤務』の歴史において特筆すべきは、その初演が作曲者の死後、長い年月を経て行われた点です。シューベルトがこの世を去ってから68年を経た1896年9月23日、ドイツのドレスデンにある宮廷歌劇場（現在のゼンパー・オーパー）にて初めて公開されました。これは、彼のオペラ作品の多くが存命中には上演機会を得られなかったという事実を物語る一例でもあります。

しかしながら、その初演後も本作が広く上演されることはほとんどありませんでした。今日のオペラ上演レパートリーにおいて、『4年間の歩哨兵勤務』が取り上げられる機会は極めて稀であり、シューベルトの数ある作品の中でも、一般にはあまり知られていない存在となっています。

作品の意義

『4年間の歩哨兵勤務』は、シューベルトが青年期に手がけたオペラ作品として、彼の劇音楽への初期の試みを知る上で貴重な資料です。歌曲の分野で絶大な評価を得ているシューベルトですが、オペラ創作への意欲も生涯持ち続けていました。本作は、そうした彼のオペラ作曲家としてのキャリアの初期段階を示すものであり、後のより規模の大きなオペラ作品への布石として捉えることもできます。わずか10日間で書き上げられたというエピソードや、18歳という若さで取り組まれた作品であるという点も含め、シューベルトの才能の広がりと初期衝動を感じさせる一作と言えるでしょう。上演機会は少ないものの、シューベルトの多様な創作活動の一端を示す作品として、音楽史的な価値を有しています。

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