ゼンパー・オーパー

ゼンパー・オーパー：歴史と音楽の殿堂

ゼンパー・オーパーは、ドイツ・ザクセン州の州都ドレスデンに位置する、州立歌劇場の愛称です。正式には「ザクセン州立歌劇場ドレスデン」と呼ばれますが、その美しい建築と豊かな歴史から、世界中の音楽ファンに「ゼンパー・オーパー」として親しまれています。かつては東ドイツの国立歌劇場として「ドレスデン国立歌劇場」の名で知られていましたが、現在はザクセン州立の劇場として運営されています。

壮麗な建築と歴史

ゼンパー・オーパーは、ザクセン王国の宮廷歌劇場として、1838年から1841年にかけて建設されました。設計を手掛けたのは、新古典主義建築の巨匠ゴットフリート・ゼンパーです。その豪華な内装は、ミュンヘン、ウィーン、パリの歌劇場に匹敵すると言われています。また、時計師ヨハン・クリスティアン・フリードリヒ・グートケスによって製作された、5分表示のデジタル時計が設置されたことでも有名です。

この劇場は、音楽史においても重要な場所です。リヒャルト・ワーグナーが1843年から1849年まで指揮者を務め、『リエンツィ』『さまよえるオランダ人』『タンホイザー』といった名作がここで初演されました。また、リヒャルト・シュトラウスのオペラも数多く初演されており、その初演作品の多さはミラノ・スカラ座、ヴェネチア・フェニーチェ劇場と並び称されています。

波乱の歴史

ゼンパー・オーパーは、その歴史の中で幾度も困難に直面しました。1848年の革命では、設計者のゼンパー自身が革命派を支持したために亡命を余儀なくされました。1869年には劇場が火災で焼失しましたが、ゼンパーが特赦を受けて再建に着手。1878年に息子のマンフレート・ゼンパーによって完成しました。その後、1945年のドレスデン爆撃で甚大な被害を受け、瓦礫の山と化しましたが、1977年から復興作業が始まり、1985年に見事に再建されました。1990年のドイツ再統一を経て、現在の州立歌劇場となっています。

2002年には、欧州を襲った大洪水により再び被害を受けましたが、その後復旧し、現在も多くの観客を魅了しています。

世界初演作品

ゼンパー・オーパーは、数々の名作オペラを世に送り出してきました。

リヒャルト・ワーグナー

『タンホイザー』（1845年10月19日）
『さまよえるオランダ人』（1843年）

リヒャルト・シュトラウス

『サロメ』（1905年12月9日）
『エレクトラ』（1909年1月25日）
『ばらの騎士』（1911年1月26日）
『無口な女』（1935年6月24日）
『ダフネ』（1938年10月5日）

音楽監督とオーケストラ

ゼンパー・オーパーの音楽監督（首席指揮者）は、その時代を代表する巨匠たちが務めてきました。カール・マリア・フォン・ウェーバー、リヒャルト・ワーグナー、カール・ベーム、ヘルベルト・ブロムシュテット、ジュゼッペ・シノーポリ、クリスティアン・ティーレマンなど、錚々たる顔ぶれです。

また、ゼンパー・オーパーの専属オーケストラであるシュターツカペレ・ドレスデンは、現存する世界最古のオーケストラの一つであり、その高い演奏技術は世界的に評価されています。

ゼンパー・オーパーの遺産

ゼンパー・オーパーは、その歴史と文化的な意義において、ドイツ、そして世界の音楽遺産として重要な位置を占めています。度重なる困難を乗り越え、現代においても数々のオペラやバレエを上演し、多くの観客を魅了し続けています。

また、劇場内に設置された5分表示のデジタル時計は、その精密さと美しさから、ランゲ・アンド・ゾーネのフラッグシップモデル「ランゲ1」のカレンダーのモチーフにもなっています。

参考資料

高橋憲『新ドイツの街角から ドイツ文化事情』郁文堂、2011年。ISBN 978-4-261-01240-8。

関連情報

シュターツカペレ・ドレスデン：ゼンパー・オーパーの専属オーケストラ。
ランゲ・アンド・ゾーネ：ゼンパー・オーパーの5分間時計をモチーフにした時計を製作するブランド。

外部リンク

ゼンパー・オーパー公式サイト
ゼンパー・オーパー公式ショップ
* WebChronos - ドレスデンで5分時計の裏側を見る!

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