4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)

4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン) (MOCA/MBOCA)：発がん性と規制

4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)は、化学式C₁₃H₁₂Cl₂N₂で表される有機化合物です。別名として、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタンとも呼ばれ、一般的にMOCAまたはMBOCAと略称されます。

物質特性と反応性

MOCAは、ポリウレタン樹脂の硬化剤として重要な役割を果たす化合物です。その特性として、アルミニウム、マグネシウム、カリウムなどとの反応性が挙げられます。この反応性も、MOCAの取り扱いにおける注意点を理解する上で重要な要素となります。

安全性と健康への影響

MOCAは、強力な発がん性を有することが知られています。特に、膀胱がんとの関連性が強く示唆されており、MOCAの製造や取り扱いに関わった労働者[におい]]て、膀胱がんの発症例が多数報告されています。このため、国際がん研究機関]は[[2010年にMOCAを発がん性リスクグループ1に分類しました。これは、ヒトに対する発がん性が確実であることを意味します。

日本の法規制においても、MOCAは1976年に特定化学物質障害予防規則の特定第2類物質、特別管理物質に指定されています。これは、MOCAの製造、使用、廃棄において、厳格な安全対策を講じることを義務付けています。具体的には、製造・取扱設備の密閉化や局所排気装置の設置、作業記録と健康診断結果の30年間保存などが求められます。また、日本産業衛生学会は1993年にMOCAの許容濃度を0.005 mg/m³と定めています。

2021年6月23日には、厚生労働省が全国で初めてMOCAが原因で膀胱癌を発症したことによる労災認定を公表しました。このことは、MOCAの危険性と労働者の健康への深刻な影響を改めて浮き彫りにしました。

用途と代替物質

MOCAは、主に防水材に使用されるポリウレタンの硬化剤として利用されてきました。2009年度の製造・輸入量は2696トンに達していました。しかし、その発がん性リスクから、MOCAを含まない代替物質の開発が盛んに行われています。現在では、MOCAを必要としないポリウレタン塗膜防水材も開発され、市場に導入されています。これらの代替物質の利用拡大により、MOCAの使用量は減少傾向にあると考えられます。

まとめ

MOCAは、ポリウレタン硬化剤として優れた特性を持つ一方で、高い発がん性リスクを有する危険な物質です。そのため、その製造、取扱い、廃棄においては、厳格な安全対策と規制の遵守が不可欠です。また、代替物質の開発と普及が、MOCAに関連する健康被害を軽減する上で重要な役割を果たしています。今後とも、MOCAの安全性に関する研究と、より安全な代替物質の開発が継続されることが期待されます。

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