4P田中くん

4P田中くん

『4P田中くん』は、七三太朗原作、川三番地作画による高校野球漫画です。1986年30号から1996年24号まで『週刊少年チャンピオン』（秋田書店）で連載され、少年チャンピオンコミックスから全51巻が刊行されました。KCデラックス（講談社）からは、夏の甲子園大会までを収録した全9巻が発売されています。

タイトルの「4P」は、「4番打者でピッチャー（投手）」を意味します。主人公の田中球児が、まさにその役割を担い、チームを勝利に導く姿が描かれています。

野球漫画のレジェンド

本作は「野球漫画のレジェンド」と称されることもあり、多くの野球ファンに愛されています。川﨑宗則選手や大瀬良大地選手といったプロ野球選手も愛読しており、影響を受けたと公言しています。

作品の特徴

『4P田中くん』は、1980年代後半から1990年代前半の高校野球の常識が色濃く反映されている点が特徴です。以下にその具体例を挙げます。

体罰やスパルタ特訓: 監督による体罰や過酷な特訓が当たり前のように行われています。主人公に対する、現代では犯罪レベルとも言えるシゴキも描かれています（ただし、物語序盤のみ）。
球質: 球の重さや軽さが誇張して表現されています。ムービングボールでバットの芯を外すといった、現代野球にも通じる理論的な説明もされています。
サイン盗み: 塁上のランナーが球種を盗み、打者へ伝達するシーンが頻繁に描かれています。当時はサイン盗みが横行していたことがうかがえます。
球速: 球速が150キロを超えると人間の動体視力の限界を超える、という設定も当時の高校野球では常識として扱われていました。
ラフプレー: ランナーへの過剰な接触行為など、現代では考えられないラフプレーが容認されています。
金属バット: 金属バットの特性を生かしたコンパクトなミート打法が多用されています。主人公をはじめ、多くの打者がバットを短く持ち、この打法で本格派投手を攻略します。
主観時間: 投球後のボールが捕球されるまでの0.5秒にも満たない時間に、登場人物間で多くの会話が成立するなど、主観時間が非常に長く描かれています。

あらすじ

物語は、北東京（本作では東京都の甲子園出場校は東東京、西東京に加え北東京の3校）の野球名門校、栄興学園に「10年に1人の逸材」として青森県出身の田中球児が入学してくる場面から始まります。しかし、彼は同姓同名の別人であり、野球の実力は素人同然でした。

学校側の都合で球児を追い出すことができない八十島監督は、彼に厳しい個人特訓を課します。自主的に辞めるか、故障すれば辞めさせる口実になると考えたのです。しかし、球児は特訓をひたむきにこなし、監督の目論見は外れます。

次に監督は、練習試合で球児を起用し、実力のなさを露呈させようとします。しかし、球児はチームメイトのアドバイスを聞き入れ、ホームランを放ち、勝利投手の権利まで獲得するという活躍を見せます。

その後、球児はめきめきと成長し、栄興学園の投手兼4番打者として、甲子園優勝を目指して活躍していくことになります。

外部リンク

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