50セント硬貨 (アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国50セント硬貨（ハーフダラー）の歴史と概要

アメリカ合衆国の50セント硬貨、通称ハーフダラーは、1794年のアメリカ合衆国造幣局設立初期から製造されている歴史ある硬貨です。1セント硬貨を除き、アメリカで最も継続的に製造されている硬貨の一つです。主にカジノでの利用が多く、特にポーカーなどのゲームで使われることが一般的です。そのため、カジノでは数十枚単位で巻かれた50セント硬貨を常に用意しているところもあります。

一般流通の減少と背景

ハーフダラーは、カジノや映画館を除き、一般の流通量が少ない傾向にあります。その背景には、1963年の銀価格の高騰とジョン・F・ケネディ大統領の暗殺という二つの大きな出来事がありました。

1962年から1963年にかけて、銀の価格が急騰し、当時の銀貨を溶かして銀塊にした方が価値が高くなるという異常事態が発生しました。これにより、銀含有率の高い硬貨（1964年まで10セント硬貨などは銀90%含有）が市場から急速に姿を消し始めました。この事態を受け、アメリカ政府は1965年以降、表面を白銅などで覆い、銅を主体とした金属構成へと変更を余儀なくされました。しかし、ケネディ大統領の肖像が描かれたハーフダラーは、1965年から1970年まで銀を40%含む合金で製造が続けられました。

ケネディ大統領のハーフダラーは、その心情的な背景や、当時唯一貴金属を用いて製造されていた硬貨であるという認識から、一般的には使用されずに保管されることが多くなりました。1971年以降、金属構成が銀をほとんど含まないものに変更された際には、一般の人々やビジネスの世界では既にハーフダラーが流通しない環境に慣れていました。その結果、大きな金額のお釣りには25セント硬貨が利用されることが一般的になり、50セント硬貨の流通量はさらに減少しました。

現在では、ほとんどの店舗で50セント硬貨や1ドル硬貨はレジに常備されておらず、銀行でも通常業務ではあまり扱われません。さらに、アメリカ国内の自動販売機もハーフダラーに対応していないため、流通量の増加には至っていません。

ハーフダラーの初期の歴史

1794年12月1日、最初の50セント硬貨（約5,300枚）が製造されました。翌1795年1月にはさらに18,000枚が製造されましたが、これらの硬貨は金型製作費が高額だったため、「1794年」の製造年が刻印されました。1790年代から製造量が多かったこともあり、1801年までに3万枚以上の硬貨が製造されました。初期の硬貨の裏面には、アメリカ合衆国の国章を基にしたワシの紋章が描かれていました。

1804年に製造された15万枚のハーフダラー硬貨には謎があります。これらの硬貨は、会計上の問題から「1803年」の金型で製造されましたが、そのうち1枚が現存しています。また、1838年にはハーフダラー硬貨の金型が初めて他の造幣支局にも分譲されました。最初はニューオーリンズの造幣所に送られ、1839年には約18万枚のハーフダラー硬貨が製造されました。これらは、収集家向けに製造された「キャップト・バスト」と呼ばれるハーフダラーです。

デザインの変遷

ハーフダラーのデザインは時代とともに変化してきました。以下にその主なデザインと製造年をまとめました。

ハーフダラー銀貨

フローイング・ヘアー（長髪の人物の胸像）：1794年～1795年
ドレイプト・バスト（長髪の人物の胸像）：1796年～1807年
裏側が小さなワシ：1796年～1797年
裏側がワシの紋章：1801年～1807年
キャップト・バスト（帽子をかぶった人物の胸像）：1807年～1839年
シーテッド・リバティ（座っている女神像）：1839年～1891年
モットー「E Pluribus Unum」がないもの：1839年～1866年
モットーがあるもの：1866年～1891年
バーバー（帽子・花冠をかぶった女神の肖像）：1892年～1915年
ウォーキング・リバティ（歩く女神の全身像）：1916年～1947年
フランクリン（ベンジャミン・フランクリンの肖像）：1948年～1963年
ケネディ（ジョン・F・ケネディの肖像）：1964年
ケネディ（ジョン・F・ケネディの肖像）：現在（収集家向け）

銀含有量40%のハーフダラー硬貨

1965年～1970年製造のケネディ・ハーフダラー
1976年製造のケネディ・ハーフダラー（5億枚のうち1,100万枚が銀40%含有）

銅・ニッケル合金クラッドメタルのハーフダラー硬貨

1971年～1974年、1977年～2000年、2001年～現在までのケネディ・ハーフダラー（流通用ではなく収集家向け）
200周年記念のケネディ・ハーフダラー：1975年～1976年（製造年は全て「1776-1976」と刻印）

このように、50セント硬貨はアメリカ合衆国の記念硬貨にも頻繁に用いられる通貨単位です。

参考情報

この解説は、以下の情報源を参考にしています。

R・W・ジュリアン『All About the Half Dollar』 Numismatist Magazine 2006年12月号

外部リンク

アメリカ合衆国50セント硬貨、画像など（英語）
コインファクツ.com ケネディ・ハーフ・ダラー硬貨（英語）

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