5150 (アルバム)

ヴァン・ヘイレン『5150』：新時代の幕開け

1986年、アメリカン・ハードロック界の巨人、ヴァン・ヘイレンは通算7作目となるスタジオアルバム『5150』を発表しました。本作は、バンドにとって大きな節目となる作品です。長年フロントマンを務めたデイヴィッド・リー・ロスが脱退し、新たに実力派シンガーのサミー・ヘイガーを迎え入れて制作された最初のアルバムだからです。

前作『1984』に伴う大規模なツアーが終了した後、デイヴィッド・リー・ロスは自身のソロキャリアに専念することを決意し、1985年初頭には初のソロミニアルバムをリリース。そのままヴァン・ヘイレンのリハーサルには合流せず、バンドを去る道を選びました。リードシンガー不在となったヴァン・ヘイレンは、当時ソロアーティストとして活動していたサミー・ヘイガーに接触。ギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレンは、その年の9月にはサミーのライブステージに飛び入り参加するなど、新たなコラボレーションへの期待が高まっていきました。

アルバム制作にあたり、長らくバンドのサウンドを支えてきたプロデューサーのテッド・テンプルマンは、皮肉にも脱退したデイヴィッド・リー・ロスのソロアルバムを手掛けていました。そのため、『5150』のプロデュースは、フォリナーのミック・ジョーンズに委ねられることになります。

音楽面では、エドワード・ヴァン・ヘイレンがギタープレイに加え、新たな音作りに挑戦しています。「ホワイ・キャント・ディス・ビー・ラヴ」「ドリームス」「ラヴ・ウォークス・イン」といった楽曲ではキーボードを大胆に導入し、バンドのサウンドに新たな広がりをもたらしました。また、「ゲット・アップ」「サマー・ナイツ」では、アーミング時に全ての弦の音程変化が一定になる「トランストレム」システムを搭載したスタインバーガー社製のギターを使用し、独特のサウンドを生み出しています。

本作は商業的にも大成功を収めました。ヴァン・ヘイレン史上初となる全米アルバムチャートでの1位を獲得し、しかも3週連続でその座をキープするという快挙を成し遂げたのです。先行シングルとしてリリースされた「ホワイ・キャント・ディス・ビー・ラヴ」は全米シングルチャートで3位にランクイン。他にも「ドリームス」（全米22位）、「ラヴ・ウォークス・イン」（全米22位）、「ベスト・オブ・ボース・ワールズ」（ビルボード・メインストリーム・ロック・チャート12位）、「サマー・ナイツ」（メインストリーム・ロック・チャート33位）といった楽曲がシングルカットされ、ヒットを記録しました。また、「グッド・イナフ」は1987年公開の映画『スペースボール』で使用されています。

アルバムタイトルである「5150」は、「フィフティワンフィフティ」と発音され、カリフォルニア州法で定められた、自己または他者に危害を加える恐れのある精神障害者の措置入院に関する警察のコード番号（隠語）に由来しています。エドワード・ヴァン・ヘイレンはこの数字がお気に入りだったようで、前作のビデオクリップでこのテーマに触れたり、自宅裏に建設した自身のスタジオを「5150 Studios」と名付けたり、ギターにステッカーを貼ったりしていました。後の1992年には、自身のシグネチュア・アンプのモデル名にも「Peavey 5150」として採用されています。

本作に伴うツアーでは、サミー・ヘイガーが一部楽曲（エディがキーボードを演奏する曲やサミー自身のソロ曲など）でギターも担当する姿が見られました。その模様は、ライブDVD作品『ライヴ・ウィズアウト・ア・ネット』で確認することができます。

収録曲

全曲、バンドメンバー4人の共作です。

1. グッド・イナフ - "Good Enough" - 4:04
2. ホワイ・キャント・ディス・ビー・ラヴ - "Why Can't This Be Love" - 3:47
3. ゲット・アップ - "Get Up" - 4:37
4. ドリームス - "Dreams" - 4:54
5. サマー・ナイツ - "Summer Nights" - 5:06
6. ベスト・オブ・ボース・ワールズ - "Best of Both Worlds" - 4:48
7. ラヴ・ウォークス・イン - "Love Walks In" - 5:11
8. "5150" - ""5150"" - 5:44
9. インサイド - "Inside" - 5:02

参加ミュージシャン

サミー・ヘイガー - ボーカル
エドワード・ヴァン・ヘイレン - ギター、キーボード
マイケル・アンソニー - ベース
アレックス・ヴァン・ヘイレン - ドラムス

もう一度検索