79式対舟艇対戦車誘導弾

79式対舟艇対戦車誘導弾ATM-2

79式対舟艇対戦車誘導弾（ATM-2）は、川崎重工業が設計し日本の陸上自衛隊で使用されるミサイルシステムです。このミサイルは、主に戦車や上陸用舟艇を標的とし、その設計には日本特有の地理的状況を考慮した機能が盛り込まれています。通称「重MAT」とも呼ばれ、特にその多目的性が評価されています。

開発の歴史

このミサイルの開発は1964年から始まり、1979年に制式化されました。開発にあたっては、米製のBGM-71 TOWミサイルから多くの要素が導入されつつも、日本の独自のニーズに応じた改良が施されています。このため、対戦車攻撃だけにとどまらず、上陸用舟艇を攻撃できるような能力が追求されています。

構造と運用

79式誘導弾の発射システムは、発射機1型および2型、照準器、送信器などの構成要素から成り立ち、主に73式小型トラックを用いて運搬されます。設置方法には3通りあり、状況に合わせて選択されますが、移動中のトラックからの発射は行えず、いったん地面に配置する必要があります。誘導方式は有線式で、半自動指令照準線一致（SACLOS）を採用しています。これにより、発射後も発射手が目標を追い続け、ミサイルは誘導用のワイヤーを引いて飛行する仕組みです。この技術により、ミサイルは従来型よりも飛翔速度が大幅に改善されています。

弾頭には2種類の選択肢があり、対戦車榴弾と対舟艇榴弾が搭載されています。これにより、特定の攻撃目標に応じた適切な弾薬を選ぶことができます。また、89式装甲戦闘車にもこのミサイルが搭載されているものの、互換性はありません。

運用と歴史的背景

79式対舟艇対戦車誘導弾は、最初に配備されたのは師団直轄の対戦車隊です。進化する装備により、1995年までに240基の発射機が調達されました。しかし、技術の進歩とともに後継の96式多目的誘導弾システムが登場し、こちらは光ファイバーによる有線誘導を採用しています。そのため、導入コストやシステムの複雑さから配備は進みにくい状況が続きました。

2010年には誤発射の事故が発生しましたが、大事には至らなかったものの、一時的に運用の見直しが求められました。時が経つにつれ79式ミサイルも老朽化が進み、徐々に退役が進められました。ついに2023年3月に正式に地上発射型が運用終了となりましたが、一部の部隊では引き続きその運用が続けられています。

文化的な登場

79式対舟艇対戦車誘導弾は、映画やゲーム、小説などにも登場しています。例えば、映画『ガメラ2 レギオン襲来』では、自衛隊がこのミサイルを用いて巨大な敵に対処する場面が描かれています。また、ゲーム『Wargame Red Dragon』や『War Thunder』にもその名を見ることができます。

このように、79式対舟艇対戦車誘導弾ATM-2は、日本の防衛力の重要な一翼を担うとともに、文化的にも様々な形で紹介されているミサイルシステムです。

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