881 歌え!パパイヤ

『881 歌え!パパイヤ』（原題：881）は、2007年に製作されたシンガポール映画です。この作品は、シンガポールやマレーシアの一部地域で古くから親しまれている大衆芸能、「歌台（ゲタイ）」の世界を色彩豊かに描き出しています。歌台とは、主に移動式の特設ステージで行われる、歌や踊り、コメディなどを組み合わせたエンターテイメントであり、地域のコミュニティにとって重要な文化的な要素となっています。

本作は、その活気あふれる歌台文化を背景に、登場人物たちの人間ドラマを丁寧に描いたことが評価され、国際的な舞台でも注目を集めました。特に、第80回アカデミー外国語映画賞には、シンガポールを代表する作品として公式に出品されました。これは、シンガポール映画の多様性と表現力が世界に認められた重要な出来事の一つと言えるでしょう。

物語の中心となるのは、「リトル・パパイヤ」と「ビッグ・パパイヤ」という名前で活動する姉妹の歌台デュオです。彼女たちが歌台の世界でスターになることを夢見ながら、様々な困難に直面し、お互いを支え合いながら成長していく姿が描かれます。歌台の華やかなステージパフォーマンスと、その裏側にある姉妹の生活や感情が対照的に表現されています。

この映画に深みを与えているのは、個性豊かな出演者たちの存在です。

リトル・パパイヤ役を演じるのは、王欣（ミンディー・オン）です。
姉のビッグ・パパイヤ役は、楊雁雁（ヤオ・ヤンヤン）が務めました。
重要な脇役であるグアン・イン役には、戚玉武（チー・ユーウー）が出演しています。
歌台の世界を象徴する存在として、リンおばさんと歌台の女神という二役を、劉玲玲（リュウ・リンリン）が演じ分けています。
また、ライバルとして登場するドリアンシスターズは、メイとチョイが演じました。

日本国内でも、『881 歌え!パパイヤ』は様々な形で紹介され、シンガポール映画ファンだけでなく、多くの映画愛好家に観られる機会がありました。

初めて日本の観客に向けて劇場公開されたのは2008年のことです。同年8月より、東京のユーロスペースや大阪のシネマート心斎橋をはじめとする各地の映画館で上映が行われました。
劇場公開後も、各地で開催される国際映画祭や特集上映で繰り返し上映されています。
2008年9月には、アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映作品の一つとして紹介されました。
2009年2月には、第19回にいがた国際映画祭と第14回にしのみやアジア映画祭で上映されました。
2010年10月には、シンガポール映画に焦点を当てた「日本・シンガポール映画人シンポジウム」において、東京と大阪で上映されました。
2012年5月に開催されたシンガポール映画祭(Sintok2012)でも上映されています。
比較的新しい機会としては、2016年1月の第7回アジア・アフリカとびっきり映画祭でも上映されました。

自宅で作品を鑑賞したいという要望に応える形で、日本ではDVDも発売されています。2010年7月2日に、アップリンクより日本語字幕付きの日本版DVDがリリースされました。さらに近年では、動画配信サービスを通じて作品に触れる機会も提供されました。2021年3月15日からは、シンガポール政府観光局が手掛けたシンガポール製作映画を紹介する企画の一環として、大手動画配信サービスであるNetflixでの配信が始まりました。こちらの配信は2年間の期間限定で行われ、より多くの日本の視聴者が気軽に作品を鑑賞できるようになりました。

『881 歌え!パパイヤ』は、シンガポール独自の活気ある歌台文化を背景に、歌に生きる姉妹の絆と夢を鮮やかに描いた作品です。そのユニークな題材、パワフルな演出、そして心に響く人間ドラマによって、観る者に忘れられない印象を残す一作と言えるでしょう。

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