8cm ロケット発射器

8cm (多連装)ロケット発射器についての詳細

8cm (多連装)ロケット発射器（8-cm-Raketen-Vielfachwerfer）は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの武装親衛隊によって運用されたロケット砲です。特に、8cmロケット榴弾（8-cm-Raketen-Sprenggranate）の発射を目的として開発されたこの兵器について、以下に詳しく解説します。

ロケット弾の概要

ソ連侵攻が始まった1941年、ドイツ国防軍はソ連赤軍が使用するカチューシャロケット砲により大きな損害を受けました。この危機を受けて、ドイツ側ではこの有効な兵器を模倣して生産しようという意見が浮上しましたが、当時のドイツの工業力では必要な生産量を確保するのは困難でした。それでも、武装親衛隊はこの提案を強く推進し、結果として8cmロケット榴弾とその発射器が開発され、武装親衛隊の部隊に配備されることとなりました。

武装親衛隊による強引な導入があったため、配備に際して国防軍内で政治的な対立も生じましたが、8cmロケット榴弾は独特の設計が魅力となりました。このロケット弾は、尾部の小翼による翼安定方式を採用し、飛行中の安定性を確保していました。また、推進薬にはコルダイトが選ばれ、高価だったダブルベース薬の使用を避けた点も注目されます。

特徴的な信管設計

8cmロケット榴弾の特筆すべき点はその信管にあります。着発信管の安全機構として、低温で融解する軟金属製のリングが導入され、ロケット発射後にモーターの熱でこのリングが溶けることで安全が解除されるという独自の設計が施されていました。この革新的な安全機構は、発射時の誤作動を防ぐために重要な役割を果たしました。

発射器の概要

8cmロケット榴弾の特性により、発射器は非常にシンプルな構造を持つことができました。製作された発射器にはいくつかのバリエーションがありましたが、全体的な生産量は少なく、武装親衛隊専用に限られたため、詳細な記録は不明な点が多いです。

現在知られている中の一つは、「被筒Mantelrohr」と呼ばれる単装型の発射器ですが、その詳細な仕様や図は残されていません。もう一つの目立った型は、24連装の8cm (多連装)ロケット発射器です。この発射器は金属製のレール式で、フランス軍から接収したMCG/MCLハーフトラックに搭載されました。

8cm (多連装)ロケット発射器の諸元

• - 戦闘時重量: 6,853kg（15,111ポンド）
• - 仰角: 0°〜37°
• - 左右角: 360°（基部の旋回による全周）

非常に類似した設計の自走迫撃砲S307(f)との混同がしばしば見られますが、両者は異なる兵器です。8cmロケット発射器は旋回可能な24連装であるのに対し、S307(f)は81.4mmの迫撃砲を16連装として固定しているため、左右角の調整ができません。

結論

8cm (多連装)ロケット発射器は、そのユニークな設計と技術革新によって、第二次世界大戦において特異な存在となりました。武装親衛隊の運用により限定的に用いられたこの兵器は、戦局に影響を与えた点で重要な役割を果たしました。

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