90ミニッツ

『90ミニッツ』は、劇作家・演出家の三谷幸喜が手がけた二人芝居の舞台作品です。2011年12月にPARCO劇場で初演を迎えました。この作品は、交通事故に巻き込まれた少年の輸血をめぐり、息子の命を救おうとする父親と、冷静に医療行為を行う外科医の間に生まれる葛藤を、緊迫感溢れるドラマとして描いています。

物語の舞台は、とある病院の一室。交通事故で重傷を負った少年が緊急手術を必要としています。しかし、輸血に必要な血液が不足しており、事態は深刻です。少年の父親は、一刻も早く息子の命を救いたいと焦燥感を募らせています。一方、担当医である外科医は、冷静に状況を判断し、医療行為を粛々と進めていきます。父親の感情的な訴えと、医師のプロフェッショナルな判断の狭間で、物語はスリリングに展開していきます。

物語の軸となるのは、父親と外科医の二人の登場人物です。父親役を演じるのは近藤芳正。彼は、息子の命を救うためなら手段を選ばない、感情的な父親の姿を熱演しています。一方、外科医役を演じるのは西村雅彦。彼は、冷静沈着でありながらも、患者の命を救おうとする強い意志を持った医師を、繊細な演技で表現しています。二人の俳優の卓越した演技が、作品に深みとリアリティを与えています。

三谷幸喜の脚本は、登場人物の心理描写が巧みで、観客は物語に引き込まれます。シリアスなテーマを扱いながらも、ユーモアのセンスも随所に散りばめられており、観客を飽きさせません。また、限られた舞台空間の中で、二人の俳優の掛け合いだけで物語を進行させる演出は、三谷幸喜の力量を示すものです。

『90ミニッツ』は、同じく三谷幸喜が脚本を手掛け、西村雅彦と近藤芳正が出演した二人芝居である『笑の大学』と関連付けて語られることもあります。『笑の大学』は、1996年に初演された作品で、こちらも高度な会話劇として評価されています。この二つの作品は、三谷幸喜の得意とする会話劇の魅力を存分に味わえる作品と言えるでしょう。

『90ミニッツ』は、人間の生死に関わる重いテーマを扱いながらも、エンターテイメント性も兼ね備えた舞台作品です。観る者に深く考えさせると同時に、演劇の面白さを改めて感じさせてくれます。PARCO劇場での初演後も、再演が期待される作品です。

外部リンク

90ミニッツ（PARCO劇場）

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