98NOTE

98NOTE：日本のノートPC市場を牽引したNECの伝説的シリーズ

98NOTEは、日本電気株式会社（NEC）がかつて発売していたPC-9800シリーズのノートパソコンです。PC-9800シリーズのラップトップ機であるLシリーズの後継として登場し、日本で「ノートパソコン」という名称を定着させた機種の一つと言われています。その歴史は、1989年の初代機発売から、LaVieシリーズへと進化を遂げるまで、日本のパソコンの歴史と深く関わっています。

初代機と革新的な技術

1989年11月に発売された初代機PC-9801Nは、V30 10MHz駆動、モノクロ8階調液晶ディスプレイを搭載したモデルでした。競合機種に先行される形でわずか3ヶ月半という短期間で開発・発売されたことからも、NECの技術力の高さが伺えます。当時、多くのソフトが2台のフロッピーディスクドライブ(FDD)を必要としていたことから、初代機は1台のFDDに加え、RAMドライブ機能を搭載。本体メニューから設定することで、FDの代わりにRAMをドライブとして使用することができました。

さらにNEC独自の拡張RAMカードスロットを搭載し、EMSメモリとして使用できるRAMカードを内蔵可能でした。背面には独自の拡張コネクタ（98ノートバス）を備え、デスクトップPC-9800シリーズのCバススロットと電気的・論理的に互換性がありました。オプションのI/O拡張ユニットPC-9801N-08を使用することで、多くのPC-9800シリーズ用オプションボードが使用可能となり、拡張性の高さを実現していました。この拡張バスは、シリーズ後半まで98NOTEの大きな特徴でしたが、小型軽量化を重視した98NOTE Light以降の機種では省略されることになります。

基本仕様の拡充と多様なモデル展開

1990年代に入ると、98NOTEシリーズはCPUの進化、HDDの搭載、カラー液晶ディスプレイの採用など、技術革新を続けました。1990年に登場した98NOTE SX (PC-9801NS) は、80386SXを搭載し、RAMカードはプロテクトメモリとしても使用できるようになりました。また、この機種から2.5インチIDE規格HDDの内蔵モデルが登場し、PC-9800シリーズでは初の事例となりました。その後も、PC-9801NV、PC-9801NS/Eといった機種が発売され、レジューム機能、セカンドバッテリーパック、外部ディスプレイ出力などの機能が追加されていきました。1991年には世界初のTFTカラー液晶搭載ノートPCであるPC-9801NCも登場しています。

1992年には、小型軽量化を追求した98NOTE Lightシリーズが登場。初代PC-9801NLはA4薄型サイズで、PCMCIA規格のICカードスロットも搭載されましたが、当時のカードスロットの機能制限から、普及には至りませんでした。その後も、独自のRAMカードスロットにI/O機能を追加したり、PCカードスロットを搭載したりと、拡張性の向上に向けた改良が続けられました。i486系CPUを搭載した上位機種も登場し、処理能力の向上も図られました。

PC-9821シリーズへの移行とLavieシリーズへ

デスクトップ機でPC-9821シリーズが登場した後も、98NOTEシリーズは進化を続けました。PC-9821Neを皮切りに、PC-9821シリーズのアーキテクチャを採用したモデルが多数登場し、メモリ専用スロットへの一本化、PCカードスロットの搭載など、規格の統一が進みました。98NOTE LightシリーズはB5ファイルサイズに小型化され、拡張バスコネクタやRAMドライブは省略されました。また、Windows 95時代にはシリーズ名が98NOTE Lavieに変更され、小型機は98NOTE Aileとなりました。この頃にはRAMドライブが廃止され、2台のFDDを必要とするソフトの利用が困難になっていきました。

その後も、Pentium搭載モデル、MMX搭載モデルが登場し、性能向上は続きました。Windows 98搭載モデルもラインナップに加わり、シリーズ最終機種となるPC-9821Nr300は1999年に発売されました。

98NOTEの成功要因

98NOTEシリーズの成功は、PC-9800シリーズの高い互換性、NECの積極的な技術開発、そして市場ニーズへの的確な対応によるところが大きいです。特に、拡張性の高さは多くのユーザーを魅了し、長く愛されるシリーズとなる要因となりました。また、大江千里さん、竹中直人さんといった著名人を起用したCM戦略も、ブランドイメージの構築に大きく貢献したと言えるでしょう。

98NOTEは、単なるノートパソコンという枠を超え、日本のパソコンの歴史における重要な一端を担ったと言えるでしょう。

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