PCカード

PCカード：小型パソコンの拡張性を支えた規格

PCカード（PC Card）は、パソコンの機能を拡張するための小型カード型インタフェース、およびその規格に準拠した拡張カードです。主にノートパソコンや小型デスクトップパソコンで利用され、モバイル環境において大きな役割を果たしました。PCカード規格は、プラグアンドプレイ（挿抜時の自動認識）とホットスワップ（電源投入時でも挿抜可能）を本格的に実現した、PC用インタフェース規格の先駆けとなりました。

PCカードの歴史と規格

PCカードは、当初「PCMCIAカード」や「PCMCIAスロット」と呼ばれていました。PCMCIAとは、Personal Computer Memory Card International Association（パソコン用メモリカード国際協会）の略で、規格策定団体を指します。1993年には規格の統一呼称として「PCカード」が制定され、PCMCIAという名称は団体名のみを指すようになりました。

規格の開発は1985年、日本電子工業振興協会（JEIDA、現JEITA）のICメモリカード技術専門委員会において開始されました。当初は電子手帳などを対象としていましたが、米国におけるPCMCIAの設立を受け、日米で共同作業が進められ、1990年にPCMCIA Standard Release 1.0が発行されました。初期の規格には互換性の問題がありましたが、1993年のPCカードガイドラインVersion 4.2/PCMCIA Standard Release 2.1で互換性が確保され、統一規格が確立しました。

PCカードには、主に以下の種類があります。

16ビットPCカード: ISAバスをベースとした初期の規格。
CardBus: PCIバスをベースとした32ビット規格。16ビットPCカードとの後方互換性があります。

PCカードの後継規格として、ExpressCardが登場しました。ExpressCardはUSB 2.0とPCI Expressをベースとしており、PCカードとは互換性がありません。ただし、CardBusスロットではUSB 2.0を増設できるため、USB 2.0のみを使用するExpressCardであれば、変換アダプタを使ってCardBusスロットで使用できます。

PCカードの形状と種類

PCカードのサイズはクレジットカードサイズ（85.6mm×54.0mm）で、厚さによってType I（3.3mm）、Type II（5mm）、Type III（10.5mm）の3種類があります。Type Iは主にSRAMカードに使用されていましたが、現在ではほとんど見られません。Type IIはATAフラッシュメモリカードや各種I/Oカードで広く使われました。Type IIIは主にATA HDDカードに使用されていましたが、マイクロドライブの普及により、これも減少しました。コネクタは68ピンで、カードの一端に配置されています。また、PCカードには5V駆動と3.3V駆動のものがあり、誤挿入防止キーが設けられています。CardBusカードは、電気的特性の安定化のため、コネクタ部上面にグランドプレートを備えています。

PCカードスロットもカードの種類に合わせて設計されています。Type IカードはType IIスロットにも挿入できます。多くのノートPCでは、Type IIスロットを2つ備え、Type I/IIカードを2枚、またはType IIIカードを1枚使用できるようにしていました。しかし、大容量メモリカードや超小型HDDの登場、USBなどの他のインタフェースの普及、PCの薄型化などにより、2010年頃にはType IIスロット1つのみを備えるPCが増えました。

PCカードのドライバと動作環境

PCカードのドライバは、一般的にソケットサービスとカードサービスの2つの階層で構成されています。ソケットサービスはPCカードスロットのコントローラチップを直接制御し、ハードウェアの違いを吸収する役割を果たします。カードサービスはPCカードとソケットサービスを仲介し、PCカードが使用するメモリアドレスなどのリソースを管理します。Windows 9xでは、「システム」のプロパティでPCカードスロットが32ビットドライバで動作しているか（Windowsネイティブドライバ）どうかを確認できます。ただし、これはハードウェアのCardBus対応とは無関係です。MS-DOS互換モード（16ビット）では、ホットプラグ非対応のカードも多いです。

PCカードの用途

PCカードは、ストレージ、通信、インタフェースなど様々な用途に使用されました。

ストレージ: SRAM、リニアフラッシュメモリ、ATAフラッシュメモリ、各種メモリカードアダプタ、ATA HDDなど
通信: アナログモデム、ISDNターミナルアダプタ、携帯電話/PHS/WiMAXデータ通信カードなど
インタフェース: SCSI、ATAPI、USB、IEEE 1394、eSATA、RS-232C、プリンタポート、GPIBなど
ネットワーク: イーサネット、トークンリング、無線LAN、Bluetoothなど
* マルチメディア: ワンセグチューナー、ビデオカード、ビデオキャプチャ、サウンドカード、ゲームポートなど

しかし、デバイスの内蔵化やUSBなどのインタフェースの普及により、2006年以降はメモリカードアダプタ、無線LANカード、PHSデータカードなど、PC本体に搭載されていない機能を追加する用途に限られるようになってきました。また、ExpressCardの登場や転送速度の向上により、PCカードは徐々にその役割を終えつつあります。

PCカードとExpressCard

ExpressCardはPCカードの後継規格として登場しましたが、PCカードとは互換性がありません。ExpressCardはPCカードよりも小型で、高速なPCI Expressインタフェースに対応していることが大きな特徴です。しかし、PCカードはExpressCardと比べるとサイズが大きいため、広い空間を利用できるという利点があります。例えば、PCカードスロットに収納できるマウスなども販売されていました。

まとめ

PCカードは、ノートパソコンなどの小型PCの拡張性を支えた重要な規格でした。その手軽さと多様な用途から、長らく利用されてきましたが、技術の進歩と他のインタフェースの普及により、現在ではその存在感は薄れています。しかし、PCカードの歴史は、モバイルコンピューティングの発展において重要な役割を果たしたことを示しています。

もう一度検索