99Basic

99Basic（キューキューベーシック）は、1999年に飯田崇之氏が個人で開発した、Windows上で動作するBASIC言語の処理系です。通常、BASICは大文字で表記されますが、開発者自身は「99Basic」という表記を用いています。これは特にPC-9800シリーズなどで広く使われたN88-BASICの流れを汲むインタプリタとして位置づけられています。

この処理系は、かつて広く普及したN88-BASICを中心に、MSX-BASICやSord M5 BASICといった様々なBASIC環境を参考に開発されました。完全な互換性を全て持つわけではありませんが、基本的にはN88-BASICとの互換性が非常に高い設計となっています。特に、当時のN88-BASICユーザーにとっては馴染みやすい環境が提供されました。

その仕様は、近年主流となっているオブジェクト指向や構造化プログラミングといった高度な概念への拡張を含まず、古き良き時代のコンピュータ言語を彷彿とさせる行番号を用いたオーソドックスな記述スタイルを採用しています。これは、複雑な機能を排除し、シンプルかつ直感的にプログラミングができるBASIC本来の特性を重視した設計思想に基づいています。開発者によって付けられたキャッチフレーズは「前時代的ＢＡＳＩＣの決定版！」であり、まさにその設計思想を端的に表していると言えるでしょう。

プログラム実行時の外観は、一見するとコマンドプロンプトのようなDOS窓を思わせるシンプルなものです。画面サイズは、通常起動時には640×400ドットですが、利用環境に応じてサイズを可変させることが可能で、最大で1024×1024ドットの高解像度表示にも対応しています。これは、多様な表示ニーズに応えるための柔軟な設計と言えます。

機能面では、外部機器との通信に広く用いられるRS-232Cのサポートや、時間間隔を指定して処理を実行できるインターバルタイマ割り込みの実装など、ハードウェア制御に関わる機能も含まれており、単なる数値計算だけでなく、外部デバイスとの連携を伴うアプリケーションの開発も視野に入れられていました。さらに、より高速な処理や低レベルな制御が必要な場合には、機械語プログラムを組み込んで使用することも可能です。

配布形態としては、開発当初はシェアウェアとして提供されていましたが、2002年にはより多くのユーザーに利用してもらうため、フリーウェアとして一般に公開されることになりました。このフリーウェア化の際に公開されたバージョン1.19が、公式に開発が停止された最終バージョンとなっています。

開発が停止された現在でも、99Basicはその動作の安定性と、インタプリタ方式でありながら実現された高速な実行性能から、特定の用途においては有効なツールとして利用されています。特に、かつてのN88-BASIC資産をWindows上で手軽に動かしたい場合や、シンプルで直接的なプログラミング環境を好むユーザーにとって、選択肢の一つとなり得るBASIC処理系と言えるでしょう。

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