AアンドP・ロバーツ

AアンドP・ロバーツ（A. & P. Roberts, Co.）について

AアンドP・ロバーツは、かつてアメリカのペンシルベニア州ペンコイドに本拠を置き、主に鉄工業に従事していた企業です。設計部門はこの会社が担当し、製造業務はペンコイド鉄工所が行いました。1900年にはアメリカン・ブリッジに統合され、以来、同社の傘下として活動を続けていました。日本ではこの企業の名前が橋梁製造業者としてよく知られています。

歴史的背景

ペンコイドという地名は、1683年に入植したウェールズ出身の農業経営者、ジョン・ロバーツに由来しています。この地名は「森のてっぺん」という意味を持ち、ジョンの先祖代々が住んでいたウェールズの名前を模して付けられたものです。このペンコイドは、工業が進展する時代背景の中で発展を遂げました。

ペンコイド鉄工所の設立

ペンコイド鉄工所自体は、1852年にジョン・ロバーツの7代目の子孫であるアルジャーノン・シドニー・ロバーツとパーシバル・ロバーツの兄弟によって設立されました。この時期はアメリカで鉄道建設が盛んな時期で、ペンコイド鉄工所は鉄道関連商品に特化して製造を行っていました。また、1859年以降は、鉄製または鋳鋼製の橋も手がけるようになりました。

AアンドP・ロバーツの設立

同じく1852年に設立されたAアンドP・ロバーツは、設計業務をこの社名の下で行うこととしました。これにより、日本に現存するいくつかの橋梁に「AアンドP・ロバーツ ペンコイド鉄工所製」という銘板が残されている理由が分かります。このため、同じ橋梁に関する書類などでは製造元が異なる場合もありますが、設計と製造の役割分担が明確でないこともあります。後にパーシバル・ロバーツの息子であるパーシバル・ウィリアムソン・ロバーツが社長に就任し、企業の方向性に影響を与えました。

アメリカン・ブリッジへの統合

AアンドP・ロバーツは、企業のトラスト化を進めるジョン・モルガンの計画により、他の27社と合併し、アメリカン・ブリッジの一部となりました。これによって、ペンコイド鉄工所はアメリカン・ブリッジのペンコイド工場として名を変えました。続く1901年には、モルガンがアメリカの主要な鉄鋼会社を統合してUSスチール社を設立し、アメリカン・ブリッジはその子会社として位置付けられました。社長となったパーシバル・ロバーツJr.は、アメリカン・ブリッジの経営だけでなく、USスチールの取締役を兼任するなど、影響力を持ちました。

しかし、不景気の影響を受け、ペンコイド工場は1927年に閉鎖されました。さらには、1937年にカーネギー・イリノイ・スチールに買収され、その後第二次世界大戦の終了と共に閉鎖を迎えました。

日本における遺産

AアンドP・ロバーツの名は日本にも残っており、いくつかの実際の橋梁に見ることができます。例えば、岐阜県大垣市に位置する揖斐川橋梁（1900年製）があります。この橋は東海道本線で使用されていたものの転用品です。また、大阪市の上淀川橋梁（1899年製）や、和歌山市の紀ノ川橋梁（1903年製）などもこの企業による設計または製造によるものです。さらに、兵庫県加美町にある余部橋梁の橋脚も、当社の影響を感じさせる存在です。これらの橋梁は、AアンドP・ロバーツが鉄工業においてもたらした貢献を証明しています。

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