A型小惑星

A型小惑星（A-type asteroid）

A型小惑星は、太陽系内の小惑星の中でも比較的数が少なく、特に小惑星帯の内側領域に分布する特異な天体グループです。その最大の特徴は、観測されるスペクトルにあります。これは、小惑星の表面物質が光をどのように反射するかを示す情報であり、その組成を知る重要な手がかりとなります。

スペクトルと組成

A型小惑星のスペクトルは、波長約1マイクロメートル（µm）付近に強く幅の広い吸収構造を示すことで識別されます。この吸収構造は、鉱物であるカンラン石（オリビン）が豊富に存在することを示唆しています。さらに、波長が0.7マイクロメートルよりも短い可視光域では、スペクトルが顕著に赤みを帯びた傾斜を示します。このようなスペクトル特徴は、他の一般的な小惑星タイプ（例えば、C型やS型など）とは大きく異なり、A型小惑星が独特の表面組成を持つことを強く示唆しています。

起源

そのスペクトル特性から、A型小惑星はかつて熱的に進化し、内部が金属核、岩石質のマントル、そして地殻といった層状構造に分化した（分化した）原始的な天体が、その後の激しい衝突などによって破壊され、内部のマントル部分が露出したもの、すなわち「分化した小惑星のマントル由来」であると考えられています。これは、A型小惑星が太陽系形成初期における天体の熱史や、内部構造の進化を探る上で極めて貴重な情報源となりうることを意味しています。

希少性と発見状況

A型小惑星は、他のスペクトル分類に属する小惑星と比較して極めて希少です。そのため、発見されている数は非常に限られています。2018年時点では、わずか17個のA型小惑星が確認されているに過ぎません。この希少性も、A型小惑星が天文学者や惑星科学者にとって特別な関心の対象となっている理由の一つです。

主なA型小惑星

これまでに発見され、A型小惑星に分類されている主な天体は以下の通りです。

• - (246) アスポリナ (Asporina)
• - (289) ネネッタ (Nenetta)
• - (446) アエテルニタス (Aeternitas)
• - (863) ベンコエラ (Benkoela)
• - (1126) オテロ (Otero)
• - (1600) ヴィソツキー (Vyssotsky)
• - (1951) リック (Lick)
• - (2234) シュマデル (Schmadel)
• - (2423) イバルリ (Ibarruri)
• - (2501) ロヤ (Lohja)
• - (2715) ミエリッキ (Mielikki)
• - (2732) ウィット (Witt)
• - (3352) マコーリフ (McAuliffe)
• - (4142) デルスー・ウザーラ (Dersu-Uzala)
• - (4713) スティール (Steel)
• - (4982) バルティーニ (Bartini)
• - (5641) マクリーシ (McCleese)

これらの天体のさらなる詳細な観測や分析は、太陽系小天体の多様性とその形成過程を理解する上で、今後も重要な役割を果たすと考えられます。

関連情報:

小惑星のスペクトル分類

外部リンク:

A technical report on A-Type Asteroids

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