A-12 (攻撃機)

A-12 Avenger II: 概要と歴史

A-12は、マクドネル・ダグラス社とジェネラル・ダイナミクス社が共同開発した、アメリカ海軍向けのステルス艦上攻撃機です。愛称は「Avenger II」として知られ、A-6 イントルーダーの後継機として期待されていました。しかし、開発は1991年に中止されることになります。これは、F-35C JSF（ライトニングII）の開発・配備が行われるまでの間、アメリカ海軍にとって唯一のステルス機であると同時に、2017年時点で最後に計画された純粋な攻撃機という評価も受けています。

開発の経緯

A-12の開発は、アメリカ空軍が極秘に開発したF-117 ナイトホークが成功を収めた後に始まりました。海軍は旧式化したA-6の後継機として、新たな艦上ステルス攻撃機の開発を決定します。「ATA（Advanced Tactical Aircraft）」という名のもとに、設計競争が行われ、ジェネラル・ダイナミクス社とマクドネル・ダグラス社の協同チームとノースロップ社・グラマン社・ヴォート社の3社協同チームが提案を提出しました。

1987年末、海軍はジェネラル・ダイナミクス社とマクドネル・ダグラス社の共案を選定、形式名を「A-12」と決定しました。1988年には、全規模開発用機6機の製作が発注され、開発作業が始まりました。機体設計と同時に、愛称「アヴェンジャー」は選ばれました。この名称は、第二次世界大戦中の艦上攻撃機に由来し、当時の大統領ジョージ・H・W・ブッシュに関連していることから選ばれました。

開発における挑戦

ATA計画は非常に高い要求水準を掲げていましたが、機体構造に使用する複合材料や電子装備の開発に難航したことが明らかになりました。特に、艦上機として必要な強度を満たすことができず、軽量性の低い金属材料に変更されることで、機体重量が約30％も増加し、予算が想定以上に膨れ上がる結果となりました。

アメリカ海軍は、この危機的状況を受けてATAのアウトラインをリークし、広報効果で予算の確保を目指しましたが、冷戦後の軍縮の流れで期待される支持を得ることができませんでした。最終的に1991年1月、国防総省はATA計画の全面中止を発表しました。

開発中止の影響

A-12の開発中止に伴い、海軍の上級将校四人が責任を問われて退役に追い込まれ、マクドネル・ダグラス社も経営が悪化しました。これにより、同社はボーイング社に吸収合併される原因となります。代替案として計画されていたA-6の近代化も予算不足で試作機のみに終わり、アメリカ海軍向けの次期艦上攻撃機にはF/A-18E/Fが選ばれ、実戦配備されました。

開発後の展開

A-12の開発が中止された後、アメリカ連邦政府は過大に支払われた開発費用の返還を求め訴訟を起こしました。裁判の結果は、海軍による契約停止プロセスは正当とされましたが、最終的にボーイング社が返還に応じる形での和解に至ります。

また、A-12の開発過程で得られた技術知識は、後に開発されるJSF（統合打撃戦闘機）計画に活かされたとの評価もあります。モックアップがフォートワース航空博物館に展示されるなど、その影響は今でも続いています。

機体仕様

A-12は実機の製作以前に開発中止となったため、試作機は存在しませんが、計画された仕様は以下の通りです。

• - 全長： 11.35 m
• - 全幅： 21.42 m（主翼折畳時11.1 m）
• - 全高： 3.44 m
• - 翼面積： 121.6 m²
• - エンジン： GE F412-GE-400 ターボファンエンジン 2基
• - 最大速度： 928 km/h
• - 兵装： 各種ミサイル、爆弾を搭載可能
• - 乗員： 2名

このように、A-12 Avenger IIはアメリカ海軍にとっての挑戦と教訓を伴った残念な歴史を持つ機体として、現代の軍用機開発に影響を与え続けています。

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