A-60 (航空機)

A-60: ロシアの空中レーザー実験機

A-60は、G・M・ベリーエフ記念タガンローク航空科学技術複合体が開発した空中レーザー実験機で、Il-76MD輸送機を基にしています。主な目的は、衛星攻撃兵器である1LK222 Sokol Eshelonの実用化にあります。

開発の歴史

1965年、科学技術界で空中レーザーに関する複雑な問題が取り上げられ、技術的な課題を解決するための開発が始まりました。この計画は、国防の強化と新たな兵器システムの創出を目指したもので、特に大気の上層におけるビームの特性を調査することが重要視されました。

1973年には、これらの課題に取り組むための特別な設計事務所が設立され、1977年にはベリエフが「1A」と呼ばれる実験機の設計作業を開始しました。このプロジェクトには、ソ連のさまざまな科学機関と協力し、特にアルマーズ・アンテイのB.V.バンキンが重要なパートナーとして関与しました。

「1A」は1981年8月19日に初飛行を行い、1983年から試験が開始されました。その後1984年には、目標にレーザーを正確に照射することに成功しました。1991年8月29日には2機目の実験機「1A2」が初飛行し、ここに搭載されたレーザーシステムは、初期の実験結果を基に改良されていました。

しかし、その後の予算削減により、1993年にはプロジェクトが一時凍結されました。2009年にロシアがこの計画を再開したとの報道があり、2011年には再び作業が停止しましたが、2年後に改良されたA-60、すなわちA-60SEの開発が進められています。

設計と仕様

A-60はIL-76MDを基にしており、レーザーシステムの搭載に伴い外観に大きな改修が施されています。機首部分には、新しいビームディレクタータレットが装備されており、LIDARによる照準が可能です。これは、ノーズコーンにメインレーザーの光学系を設置できないための改良です。

また、メインレーザーを発射するためのタレットは機体の背面に収納式で設けられています。加えて胴体下面には、タービン発電機を収容する大きなナセルが二つ設置され、一方はレーザーの動力源、もう一方はLIDAR用の補助動力装置（APU）を格納しています。

貨物ドアは構造の問題により撤去され、尾部の機銃ターレットも削除されました。これにより、レーザーなどの設備が適切に収容できるとともに、機体の空気力学が損なわれることもありませんでした。搭載されるレーザーシステムは、出力1MWのガスレーザーで、ロシアのクルチャトフ研究所が開発したものです。

このように、A-60は最新の科学技術を駆使した高度な兵器であり、今後の進展が期待されています。

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