A.H.M.ジョーンズ

アーノルド・ヒュー・マーティン・ジョーンズ

アーノルド・ヒュー・マーティン・ジョーンズ（Arnold Hugh Martin Jones、1904年3月9日 - 1970年4月9日）は、20世紀に活躍したイギリスの歴史学者であり、古典古代、とりわけローマ末期史を専門としていました。

経歴と業績

ジョーンズの最も著名な業績は、大著『末期ローマ帝国（The Later Roman Empire, 284-602: A Social Economic and Administrative Survey）』(1964)です。この著作は、ディオクレティアヌス帝による帝国の四分割統治から、マウリキウス帝の時代に至るまでの、末期ローマ帝国から初期ビザンツ帝国にかけての地中海世界を詳細に記述し、歴史の流れを包括的に理解できるものとして高く評価されています。

しかし、この著書に対しては、主要な情報源が文字史料や碑文に偏っており、ジョーンズ自身の歴史研究の成果を反映した方法論に重きを置きすぎているという批判も近年見られます。しかし、ジョーンズがこの著作を執筆した当時は、古代末期の考古学的研究はまだ発展途上にあり、彼が研究に利用できる考古史料の量も限られていたという時代背景を考慮する必要があります。

ジョーンズの最初の著書は、『ローマ東部の属州都市（The Greek City from Alexander to Justinian）』(1940)です。彼は学術的なキャリアにおいて、1946年にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの古代史学科長に就任し、1951年にはケンブリッジ大学に移籍し、同様の要職を務めました。

人物と評価

ジョーンズが学科長に就任したのは、当時としては非常に異例の若さであったとされています。彼は、公私にわたり、そっけない態度や冷たい印象を与えることがあり、それが誤解や妬みを生むこともありました。しかし、学生からの評判は高く、親しみを持って評価されていました。ジョーンズ自身は、著書の序章における些末な伝統に固執する旧態依然とした学者たちから、自身の業績が正当に評価されていないと不満を漏らすこともありました。

しかし、彼の死後、時代区分として確立されていなかった古代末期の研究が盛んになるにつれて、ジョーンズの研究は多くの研究者の関心を集め、今日では広く認知されるようになりました。彼の緻密な史料研究と、広範な知識に基づいた叙述は、現代の歴史学研究においても重要な基盤となっています。

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