A.J.フォイト

A.J.フォイト：アメリカのレーシング界のレジェンド

アンソニー・ジョゼフ・フォイト・ジュニア、通称A.J.フォイトは、アメリカ合衆国が生んだ最も偉大なレーシングドライバーの1人と言えるでしょう。1935年テキサス州ヒューストン生まれ。整備工を志し高校を中退した彼は、ミジェットカーからキャリアをスタートさせました。

ミジェットカーでの活躍

1956年、USACミジェットカーレースに参戦。1957年にはカンザスシティで初優勝を飾ると、シーズンランキング7位という好成績を残しました。その後はスプリントカーやチャンピオンシップカーにも参戦するようになりますが、ミジェットカーレースへの出場は続け、1960年と61年のターキーナイト・グランプリでは2連勝を達成。1970年には地元ヒューストンでプロモートしたレースにも優勝するなど、ミジェットカーでの20勝を挙げました。

チャンプカーでの輝かしいキャリア

A.J.フォイトの真価が発揮されたのは、アメリカのトップカテゴリーであるチャンプカー（USAC、後にCART）での活躍です。1960年、61年とシリーズチャンピオンを獲得すると、その後も1963年、64年、67年、75年、79年と計7度のシリーズタイトルを獲得、これは歴代最多記録となっています。

そして何と言っても彼の名を不朽のものとしたのがインディ500での活躍でしょう。1961年、64年、67年、77年の4勝は、現在でも歴代最多タイ記録です。特に1961年の優勝は、燃料トラブルに見舞われながらも僅差で勝利を収めた劇的なレースとして語り継がれています。1957年から1992年までの間、彼は毎年インディ500に出場し、374レースに出走、トップ10フィニッシュは201回、そして67勝を挙げ、これも歴代最多記録となっています。

多彩なカテゴリーでの活躍

彼の活躍はチャンプカーのみに留まりません。NASCARにも1964年から1972年まで参戦し、デイトナ500を含む10勝を記録。さらに1967年にはル・マン24時間レースをダン・ガーニーとのコンビで制覇、同年にインディ500とル・マンを制覇した唯一のドライバーとなりました。デイトナ24時間レースでも2勝を挙げるなど、その活躍は多岐に渡ります。

1981年には自身のレーシングチームA.J.フォイト・エンタープライズを設立し、チームオーナーとしての顔も持ちました。現役を続けた彼は、1993年にCARTから引退を表明、1994年に現役生活に幕を閉じました。その輝かしいキャリアにおいて、通算勝利数は159、シリーズタイトル獲得数は12、そして賞金総額は600万ドルを超えました。

レーシング一家と物議を醸したエピソード

A.J.フォイトは、時に放送禁止用語を含む発言をするなど、型破りな性格でも知られていました。彼の息子ラリーと孫A.J.フォイト4世もレーシングドライバーとして活躍しており、4世はインディカー・シリーズに参戦した史上最年少ドライバーとなりました。また、彼は1964年のインディ500をフロントエンジンのマシンで優勝した最後のドライバーでもあります。

彼の激しい性格を表すエピソードとして、1997年にテキサス・モーター・スピードウェイで発生した事件があります。アリー・ルイエンダイクがコース関係者に対して暴言を吐いた際、フォイトは激昂し、ルイエンダイクを平手打ちし、激しい言葉で怒りをぶつけました。

A.J.フォイトは、類まれな才能と激しい性格、そしてレーシングへの情熱を併せ持った、まさに伝説的なドライバーと言えるでしょう。彼の功績は、これからもレーシング界の歴史に刻まれ続けることでしょう。

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