ACES II

ACES II 射出座席システム

ACES IIは、レイセオン・テクノロジーズのコリンズ・エアロスペース部門が開発した、先進的な射出座席システムです。この座席は、A-10、F-15、F-16、F-2、F-22、F-117、B-1、WB-57、B-2など、多くの軍用航空機に搭載されており、特に米空軍向けに設計されています。2013年時点で、10,000席以上が生産され、5,000席以上が実際に使用されています。

高い安全性とライフサイクルコスト

ACES IIは、米空軍がその権利を保持しているため、交換部品の調達が容易で、結果としてライフサイクルコストが低コストに抑えられることが特徴です。この座席は、第三世代の射出システムとして知られ、海外でも広く利用されています。特に、座席の購買力と耐用年数を延ばすためのプログラムにより、更なるコスト削減を実現しています。

先進的な機能と設計

ACES IIの特筆すべき点は、脱出状況を感知し、乗員にかかる力を最小化するために、高度と対気速度に基づいて最適なパラシュート展開を選択できることです。特に、デジタル電子シーケンサーが座席の制御を行い、乗員を安全に降下させるために必要な部品を起動します。このシーケンサーには墜落データ記録装置も搭載されており、墜落時の詳細な分析が可能です。

座席推進システムも独自の技術が使用されていて、さまざまな体重の乗務員でも均一な加速を得ることができます。これにより、体重に応じた適切な加速度が確保され、小柄な女性乗務員も男性パイロットと同様の条件で脱出できるように設計されています。また、数々の進化を通じて、冗長性や安定性が向上し、これに伴って傷害率も劇的に低下しました。ACES IIによる脱出時の傷害率は、他のシステムに比べて非常に低く、特に背中の負傷率は僅か1%であることが証明されています。

発射ハンドルと脱出高度

特にA-10やF-15、F-117、B-1、B-2などの機体では、発射ハンドルが一体化されており、非常時にはどちらか一方を引くだけでキャノピーの投棄と座席の射出が可能です。一方で、F-22やF-16ではスペースの制約から、1本のハンドルだけが設置されています。

座席の射出時の最小高度は、地上142フィート（約43m）で、150ノットの対気速度で達成可能です。この設計は、各航空機の仕様に適応した形で調整され、250ノット未満で優れた地形余裕高度を維持することを目指しています。

ACES IIの歴史

元々、ACESはカリフォルニア州ロングビーチでマクドネル・ダグラスによって開発され、その後フロリダ州タイタスビルに生産ラインが移転しました。1990年代後半にはボーイングとの合併があり、1999年にはグッドリッチが製品ラインを継承しました。最終的には2018年にUTCがコリンズ・エアロスペースに統合され、現在でもカリフォルニア州とコロラド州で生産が続けられています。

ACES IIは、その先進性と安全性によって、現在も多くの航空機で採用され続けており、航空機乗務員の命を守る重要な装置であると言えるでしょう。

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