ADC シーラス

ADC シーラスエンジンの概要

ADC シーラスは、イギリスのエアクラフト・ディスポーザル社によって開発された航空機用エンジンです。このエンジンは、その後の製造会社の変遷を経て、シーラス・ハーミス、さらにブラックバーン シーラスへと発展しました。1920年代から1930年代にかけて、軽飛行機に広く採用され、航空機エンジンの分野で重要な役割を果たしました。

開発の経緯

1925年、エアクラフト・ディスポーザル社は、初期型となるシーラスIを開発しました。このエンジンは、60馬力（45kW）の出力を持ち、50時間の試験に合格しました。シーラスIは、初の空冷直列型エンジンであり、フランク・ハルフォードによって設計されました。このエンジンの特徴的なレイアウトは、ADC エアディスコV8エンジンのシリンダーバンク1セットを利用しており、その設計は速やかに他社によって模倣されることとなりました。シーラスIの開発後、シーラスII、シーラスIIIと改良が続けられ、シーラス・ハーミスにおいても開発が継続されました。特筆すべきは、一部のシーラス・ハーミスの型式は、倒立エンジンとしても製造された点です。

型式と派生型

シーラスエンジンは、以下のような型式が存在します。

シーラスI：1925年
シーラスII：1926年
シーラスIII：1929年
シーラスIIIA：1933年
シーラス・ハーミスI：1929年
シーラス・ハーミスII：1930年
シーラス・ハーミスIIB：1931年、倒立
シーラス・ハーミスIV：1930年
シーラス・ハーミスIVA：1929年、倒立

さらに、ブラックバーン社による派生型として、ブラックバーン シーラス・メジャーとブラックバーン シーラス・マイナーが生産されました。これらの派生型は、シーラスエンジンの基本設計を基に、さらなる改良が加えられています。

エンジンの要目

シーラスエンジンの一般的な要目は以下の通りです。

タイプ: 空冷4気筒直列型エンジン
シリンダー直径: 4.13インチ (105mm)
ストローク: 5.12インチ (130mm)
体積: 274.36立方インチ (4.5L)
全長: 45.8インチ (116.3cm)
全幅: 18.26インチ (46.4cm)
全高: 34.3インチ (87.1cm)
重量: 260ポンド (120kg)
設計者: フランク・ハルフォード

機構

シーラスエンジンの機構は、各シリンダーに吸気弁と排気弁が1つずつ設けられています。燃料システムにはクローデルキャブレターが採用され、70オクタン価の燃料を使用します。冷却システムは空冷方式です。

性能

シーラスエンジンの性能は以下の通りです。

出力: 60馬力（45kW）
圧縮比: 4.7:1

まとめ

ADC シーラスエンジンは、航空機エンジンの歴史において重要な位置を占めています。その革新的な設計と、後の派生型を含めた幅広い応用は、当時の軽飛行機の発達に大きく貢献しました。フランク・ハルフォードの設計によるこのエンジンは、その後の航空機エンジンの設計に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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