Adres

adres（アドレス、Automatic Dynamic Range Expansion System）は、1976年に東京芝浦電気（現・東芝）によって開発された音声ノイズリダクションシステムです。

概要

adresの最大の特徴は、音楽信号の圧縮・伸張率を全帯域においてデシベル換算で1:1.5に抑制している点です。これにより、音質の変化を最小限に抑えながら、ダイナミックレンジを効果的に拡大することができます。さらに、入力信号レベルに応じて高域のエンファシスを可変させることで、単純な圧縮・伸張方式では避けられなかったブリージングノイズ（音量が小さい時にノイズが目立つ現象）を大幅に低減することに成功しました。この技術革新により、adresはドルビーBタイプを凌駕するノイズリダクション効果を実現しました。

推移

1970年代、音声雑音低減技術の主流はドルビー研究所が開発したドルビーBタイプと、日本ビクター（現・JVCケンウッド）が開発したドルビーBタイプと互換性を持つANRSでした。しかし、各社はこれらに代わる新たなノイズリダクションシステムの開発を競い、様々な方式が誕生しました。東芝は、adresユニットやadresを内蔵したカセットテープレコーダー、ラジオカセットレコーダーなどのハードウェアを開発し、東芝EMI（現・ユニバーサルミュージック合同会社）はadresディスク（レコード）やadresミュージックテープ（コンパクトカセットテープ）などのソフトウェアをリリースすることで、adresの普及に力を注ぎました。

しかし、1980年にドルビーCタイプが登場すると、状況は一変します。ドルビーCタイプは、ドルビーBタイプよりもさらに優れたノイズリダクション効果を提供し、翌1981年にはドルビーCタイプを搭載した外付けノイズリダクションユニットやカセットデッキが市場に投入されました。これにより、ノイズリダクションシステムの主流はドルビー方式へと回帰し、東芝はadresの推進方針を転換、adresは次第に衰退していきました。

adresは、その登場時には画期的な技術でしたが、より高性能なドルビーCタイプの登場により、その役割を終えることとなりました。

関連項目

東芝
Aurex
様々なノイズリダクションシステム
ドルビーノイズリダクション
ANRS/Super ANRS
dbx
スーパーD
ハイコム
* コンパンディング

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