ANRS

ANRS（Automatic Noise Reduction System、アンルス）は、日本ビクター（現JVCケンウッド）が開発した音声信号用ノイズリダクションシステムです。特に、4チャンネルステレオの差信号ノイズを低減するために開発されました。

ANRSの概要

ANRSは、ドルビーBタイプNRと周波数特性において互換性があります。ドルビーBタイプNRが音声周波数帯域を低音域と高音域に分割し、高音域信号を処理後に再合成するツーパス・エンコード方式を採用しているのに対し、ANRSは音声周波数帯域を分割せずに合成するワンパス・エンコード方式を採用しています。この技術は、1970年に同社が開発した4チャンネルステレオ方式であるCD-4方式において、前後の差信号におけるノイズ抑制のために開発されました。

ANRSが広く認知されるようになったのは、1972年6月に発売されたビクター製のカセットデッキ「CCR-667」に搭載されたことがきっかけです。その後、ドルビーとの間で互換性が正式に確認されました。しかし、1980年代半ばにはドルビーBタイプ/CタイプNRが主流となり、ANRSは次第に使われなくなっていきました。

2018年3月には、ティアックからANRSやドルビーBタイプNRで録音されたカセットテープに対応させるため、独自のドルビーBタイプNR・ANRS互換再生専用カスタムノイズリダクションを搭載したダブルカセットデッキ「TEAC W-1200」（個人用）および「TASCAM 202MK VII」（業務用）が発売されました。

Super ANRSについて

Super ANRS（スーパーアンルス）は、磁気テープが本来持つ高域リニアリティを向上させる目的で、1975年にANRSをベースに開発されました。同年9月には、ビクター製の生録用ステレオポータブルカセットレコーダー「ナマロク KD-4」に初めて搭載されました。

Super ANRSは、高域の高レベル信号を録音時に圧縮し、再生時に伸張する方式で、原理としては他のNR方式と同じです。従来のANRS回路に簡単な回路を追加するだけで改善できる点が特徴で、ANRSと同様のノイズリダクション効果に加え、0VU 10kHz録音で6dB、+5VU録音で12dBのダイナミックレンジの改善が可能です。

ただし、Super ANRSはANRSとの互換性は全くなく、ノイズリダクションの基本的な効果はANRSと同じです。一部文献等でドルビーCタイプNR互換と記述されている場合がありますが、これは誤りです。1981年10月に発売された据置型カセットデッキ「KD-D22」への搭載を最後に、ビクター製のカセットデッキ、ミニコンポ、ステレオラジカセなどのパーソナルオーディオシステムには、ANRS/Super ANRSの代わりに、段階的にドルビーBタイプ/CタイプNRが搭載されるようになりました。

まとめ

ANRSとSuper ANRSは、かつてカセットテープの音質向上に貢献したノイズリダクションシステムです。しかし、技術の進歩とともにドルビーNRが主流となり、現在では過去の技術となっています。しかし、近年では、過去の音源を再生するニーズに応え、これらの技術に対応した製品も登場しています。

関連項目

様々なノイズリダクションシステム
コンパンディング

注

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