AFTER 5 CLASH

角松敏生『AFTER 5 CLASH』：都会の夜を彩るサウンドスケープ

1984年4月21日、角松敏生による4作目のスタジオアルバム『AFTER 5 CLASH』がリリースされました。本作は、それまでの作品で多く取り上げられていた“夏の情景”や“海辺の風景”といったイメージとは一線を画し、“夜”と“都会”を鮮やかに描き出した、新たな境地を開拓した作品と言えます。

アルバム全体を彩るサウンドは、都会の夜に溶け込むような、洗練されたムードを醸し出しています。楽曲ひとつひとつが、都会の夜空の下で繰り広げられるドラマを、聴く者の心に深く刻み込むかのような力を持っています。都会の喧騒や、静けさの中にある静謐さ、そしてそこで生きる人々の感情が、音楽を通して繊細に表現されています。

特に注目すべきは、アルバムタイトルにもなっている「AFTER 5 CRASH」です。この曲は、都会の夜に繰り広げられる、何気ない出来事や感情の機微を巧みに表現した、角松敏生サウンドの真骨頂と言えるでしょう。都会の洗練された雰囲気と、どこか切ないメロディーが絶妙に絡み合い、聴く者の心を掴んで離しません。後にリメイク版が発表されるなど、現在でも高い人気を誇る楽曲です。

また、本作には「AIRPORT LADY」や「I NEED YOU」といった、後々角松敏生の代表曲として愛される楽曲も収録されています。これらの楽曲はベストアルバム『1981-1987』に収録され、多くのリスナーに親しまれてきました。「AIRPORT LADY」は、旅立ちと別れ、そして新たな出会いを予感させる、ドラマチックな世界観を表現した楽曲。「I NEED YOU」は、切ない想いを歌った、美しいバラードです。これらの楽曲は、角松敏生の幅広い音楽性を示す、重要な作品と言えるでしょう。

『AFTER 5 CLASH』は、全10曲から構成されています。A面には「IF YOU…」「MIDNIGHT GIRL」「AIRPORT LADY」「MAYBE IT'S LOVE AFFAIR」「WILL YOU WAIT FOR ME」と、テンポの良い楽曲からしっとりとしたバラードまで、バラエティに富んだ楽曲が並んでいます。B面にはタイトル曲「AFTER 5 CRASH」に加え、「STEP INTO THE LIGHT」「NEVER TOUCH AGAIN」「I NEED YOU」「HEART DANCING（あいらびゅ音頭）」が収録されており、A面とはまた違った魅力が感じられます。「HEART DANCING（あいらびゅ音頭）」は、タイトルからも想像できるように、軽快なリズムとキャッチーなメロディーが特徴的な、アルバムに彩りを添える一曲です。

スタッフクレジットには、プロデューサーとして角松敏生自身、エグゼクティブプロデューサーとして岡村靖幸、レコーディングエンジニアとして内沼英二、関根達夫、藤田浩、リミックスエンジニアとして内沼英二、そしてカッティングエンジニアとしてBernie Grundmanといった錚々たるメンバーが名を連ねています。レコーディングはNichion StudioとSound Innで行われ、ミックスはNichion Studioで行われたと記録されています。

さらに、本作はその後も高い評価を受け続け、様々なアーティストにカバーされています。例えば、降幡愛による「Memories of Romance in Driving」(SIDE A #3)など、多くのアーティストに影響を与え続けていることがわかります。

『AFTER 5 CLASH』は、角松敏生のキャリアにおいて重要な転換期を示す作品であり、彼の音楽性の多様性と、洗練されたサウンドプロダクションによって作り上げられた、まさに名盤と言えるでしょう。都会の夜を舞台にした、繊細で美しい音楽の世界をぜひ体験してみてください。

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