AGM-158 (ミサイル)

統合空対地スタンドオフミサイル（JASSM）について

統合空対地スタンドオフミサイル（Joint Air-to-Surface Standoff Missile、JASSM）は、アメリカのロッキード・マーティン社によって開発された高精度の空対地ミサイルです。2009年にアメリカ空軍に就役したこのミサイルは、特に長射程での目標攻撃が可能であり、現在はアメリカだけでなく、オーストラリア、フィンランド、ポーランド空軍でも運用されています。さらに、日本の航空自衛隊でも導入が決定しています。

来歴

JASSMの開発は1980年代末に始まったAGM-137 TSSAM計画に遡りますが、この計画が頓挫した後、アメリカ陸軍は短距離弾道ミサイルMGM-140 ATACMS|MGM-140_ATACMSの開発に移行しました。その一方で、アメリカ海軍と空軍は、リスクを最小限に抑えつつ高硬度の目標を攻撃できる長距離巡航ミサイルの必要性を感じ、1995年からJASSM計画に着手しました。初めは海軍と空軍が共に使用する予定で「Joint」と名付けられましたが、その後海軍の計画が取りやめになり、空軍専用となりました。それでも名称には「Joint」の頭文字の「J」が残りました。

JASSMの開発には数回の失敗が伴いましたが、ロッキード・マーティン社の自費による改良を経て、2009年に正式に就役しました。

設計

AGM-158Aは、テレダイン社のCAE J402ターボジェットエンジンを搭載し、自己誘導飛行が可能な設計となっています。また、ステルス特性を考慮し、レーダー反射断面積を最小限に抑えた形状を持っています。ミサイルは、機体下のハードポイントに取り付けられるか、内部の爆弾倉に収納される形で発射され、投下後に主翼と垂直尾翼を展開し、亜音速での飛行を開始します。射程は370 km以上あり、敵の対空兵器が届かない範囲から攻撃可能です。

誘導システムにはGPSおよび慣性誘導が使用され、WDLによるコース修正も可能です。また、終末誘導には赤外線画像誘導（IIR）が採用され、450 kgの貫通型弾頭WDU-42/Bが目標に向かって誘導されます。JASSMは、B-52、B-1、B-2、F-15E、F-16、F/A-18、そしてF-35など、幅広い航空機で運用可能です。

各種派生型

JASSMにはいくつかの派生型が存在します。

• - JASSM-ER（AGM-158B）：2003年から開発が始まり、エンジンをウィリアムズF107-WR-105ターボファンエンジンへと変更し、射程を925 km以上に延長しました。AGM-158Aとの間には70%のハードウェア共通性と95%のソフトウェア共通性があります。

• - LRASM（AGM-158C）：JASSM-ERを元にした対艦ミサイルで、ターゲティングおよび誘導能力を向上させ、艦艇からの発射も可能です。

• - JASSM-XR（AGM-158D）：さらに射程を延ばすことを目的に開発中で、総重量は2,300 kg、射程は1,900 kmを目指しています。

日本における導入状況

日本では、2017年度からの防衛予算においてスタンドオフミサイルの導入が進められ、F-15J戦闘機へのJASSMおよびLRASMの搭載が予定されています。2018年には中期防衛力整備計画が閣議決定され、JASSMおよびLRASMに関する整備が明記されました。その後、導入が進む中で、JASSM-ERを採用し、LRASMの導入は見送られることになりました。

2023年には、アメリカ合衆国国務省が日本向けのJASSM-ERの売却を承認し、導入に向けた枠組みが整いつつあります。売却額は最大で1億400万ドルに達する見込みです。これにより、日本の防衛体制の強化が期待されています。

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