AGM-78 (ミサイル)

AGM-78 スタンダードARM

AGM-78 スタンダードARM（Standard ARM）とは、アメリカ合衆国のジェネラル・ダイナミクスが設計した対レーダーミサイルであり、その主な目的は敵の電波発信源を攻撃することです。このミサイルシリーズは、1960年代末にその開発が始まり、主にアメリカ海軍向けに設計されました。

開発の背景

AGM-78は、AGM-45 シュライクの不足を補う形で開発されました。シュライクは、小型の弾頭と限られた射程、そして誘導装置の精度に問題を抱えていたため、これを改善する目的でAGM-78の開発が進められました。特に、当初のモデルであるAGM-78Aは、既存のRIM-66スタンダード艦対空ミサイルの設計を改良し、空中発射型の対レーダーミサイルとして生まれました。この戦略により、開発費が大幅に削減され、1967年には初期の試験が行われました。

各型の概要

AGM-78シリーズにはいくつかのバージョンが存在します。最初のバージョンであるAGM-78Aは、爆風破砕弾頭を搭載し、Mk-27 Mod 4の固体燃料ロケットモーターで推進されていました。続くAGM-78Bでは、ブロードバンドシーカーが導入され、目標選定の自由度が向上しました。AGM-78Cでは、更なるコスト削減が図られ、高信頼性のモデルが実現されました。

特にAGM-78Bはアメリカ空軍のF-4Gワイルド・ウィーゼルに搭載され、広く運用されました。このモデルは、レーダーの信号を記憶する能力があり、従来の型に比べて性能が大幅に向上しました。AGM-78Dは、1970年代中期に新型ロケットモーターが装備され、さらなる進化を遂げました。

派生型と国際的な展開

AGM-78の設計をもとに開発された派生型には、AIM-97 シークバットと呼ばれる長距離空対空ミサイルがあります。このミサイルは、複合誘導方式を採用していましたが、開発の途中で中止されました。また、イスラエル向けに廉価版のパープルパンチも開発され、これはF-4Eに搭載される形で運用されました。

運用の歴史

AGM-78は、1968年に初めて運用が開始され、アメリカ空軍と海軍の両方で使用されました。3,000発以上が製造され、1970年代後半に生産が終了するまで、このミサイルは様々な作戦に参加しました。最後のAGM-78は1980年代後半にAGM-88 HARMに置き換えられるまで、約10年にわたって運用され続けました。

仕様

AGM-78Bの基本的な仕様は以下の通りです。

• - 全長：4.57 m
• - 翼幅：108 cm
• - 直径：34.3 cm
• - 発射重量：621 kg
• - 推進機関：エアロジェット Mk 27 Mod 4 固体燃料ロケットモーター
• - 射程：最大90 km
• - 速度：最大M 2.0
• - 弾頭：爆風破砕弾頭 100 kg

まとめ

AGM-78 スタンダードARMは、対レーダー戦において重要な役割を果たし、アメリカ合衆国の航空戦力を支える中核的なミサイルの一つとなりました。その高度な技術と多様な運用形態は、冷戦時代の軍事戦略に大きな影響を与え、後のミサイル技術にも多くの影響を与えました。

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