AHSクラブ

AHSクラブについて

概要

AHSクラブ（ポーランド語で蟹を意味する）とは、ポーランドのスタロヴァ・ヴォラ製鉄所によって開発された155mm自走式榴弾砲です。この砲はNATO標準の155mm弾薬に対応しており、ポーランド陸軍およびウクライナ陸軍に向けたフルレート生産が進められています。2021年の年末までにポーランド向けに64両が製造され、今後の計画では2027年までにポーランドに120両、ウクライナに54両を供給する予定です。

設計と構造

この自走砲はイギリス製のAS-90砲塔を基盤にポーランド国産の電子機器を統合し、韓国製のK9自走砲の車体を活用しています。元々はポーランド製UPG-NG車体とフランスのネクスター社製の砲身を使用していましたが、2016年以降はK9の車体とドイツのラインメタル製砲身が採用されています。

火砲部

砲塔はAS-90のライセンス生産型であり、ポーランド製の火器管制システムが搭載されています。砲身は52口径の「Braveheart」仕様で、ポーランド国内での国産化を進める方針ながら、当面はラインメタルからの輸入に依存しています。

車体部

車体は韓国とポーランドの共同で設計されたもので、自動消火システムや補助動力装置（APU）、フィルタリング換気システムが装備されています。K9車体は高性能なサスペンションを有し、試作車両に比べて発射後の揺れが速やかに抑えられると評価されています。また、主要部品はポーランド国内での製造が進められています。

レジーナ戦隊火力モジュール

AHSクラブは「レジーナ戦隊火力モジュール」の中核を成し、各種サブシステム（アザリア戦隊火器管制システムやワラン兵站システムなど）との統合が図られています。1コの戦隊には24両のクラブ自走砲と各種指揮・支援車両が含まれ、合計で6コ戦隊に120両が整備される計画です。このシステムにより、自走砲間のデジタルデータリンクが実現し、敵の攻撃からの生存性が向上しています。

開発の経緯

ポーランド陸軍は1980年代後半から新型自走砲の開発を検討し、1991年には155mm口径の仕様が決定されました。開発はスタロヴァ・ヴォラ製鉄所に委託され、1994年には技術的要件が指定されました。アメリカやフランス、イギリスなどから技術導入を受け、最終的にはAS-90とK9が選ばれました。

2000年代には予算上の遅延や欠陥対応が課題となり、特に車体に関する問題が多発しました。その後、韓国のK9車体に切り替える契約が結ばれ、2016年からはポーランドでの生産が始まりました。

ウクライナへの供給

2022年にはロシアのウクライナ侵攻に伴い、ポーランドからウクライナに18両のクラブ自走砲が供与されました。さらに54両が新たに発注され、ポーランドはウクライナ軍への支援を強化しています。

現在の運用状況

2022年末時点でポーランド陸軍には64両が納入され、各種部隊に配備されています。これらのクラブ自走砲は、効率的な火力支援を提供しつつ、現場の状況に応じて多様な戦術に適応できる仕様となっています。今後もウクライナや他国への供給が進むことが期待されます。

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