AKB48白熱論争

『AKB48白熱論争』は、2012年に幻冬舎新書から刊行された、小林よしのり、中森明夫、宇野常寛、濱野智史による共著です。AKB48に深く魅せられた4人の論客が、その人気の理由や社会現象としての意義を徹底的に議論した内容となっています。

本書では、AKB48がなぜこれほどまでに売れ続けるのかを様々な角度から分析。人が人を「推す」という行為が、どのようにして大きな人気を生み出すのかが語られます。特に、AKB48の「総選挙」というシステムが、日本のエンターテイメント史において特異な存在として、メディアを席巻するに至った経緯が詳細に解説されています。

しかし、本書に対する批判も存在します。思想史家の仲正昌樹は、AKB48とファンとの関係性が私的な範囲に留まっている点を指摘し、それが真の意味で公共的なものとは言えないのではないかと疑問を呈しました。また、小林氏らが「公共性」という言葉を誤解・曲解している可能性や、芸能人と政治家を比較することの不適切さを指摘し、参加者たちの議論の浅薄さを批判しています。

さらに、宇野氏や濱野氏の議論が、ファンたちの私的な願望に基づく集団行動に公共性や政治性を強引に結び付けている点についても批判があります。東浩紀氏の『一般意志2.0』における問題点を踏まえ、ネット上でのバッシングや一部の過激なファンの迷惑行為を助長する危険性が指摘されています。

このように、『AKB48白熱論争』は、AKB48という社会現象を多角的に考察した意欲作であると同時に、その議論の妥当性や結論の是非について賛否両論を巻き起こした問題作でもあります。AKB48現象に関心のある方はもちろん、現代社会におけるアイドル文化やファン心理、公共性のあり方について深く考えたい方にとっても、示唆に富む一冊と言えるでしょう。

参考文献
* 仲正昌樹『ネ申〉の民主主義―ネット世界の「集合痴」について』明月堂書店、2013年。ISBN 4903145468。

もう一度検索