ALCM (ミサイル)

ALCMについて

ALCM（Air Launch Cruise Missile）は、アメリカ空軍が採用した長距離の空中発射巡航ミサイルです。正式名称はAGM-86で、その主な目的はスタンドオフ攻撃にあります。ALCMは爆撃機に搭載され、敵の防空網を突破できる能力を持っています。ここでは、ALCMの開発経緯や仕様、運用について詳しく解説します。

開発経緯

ALCMは、1960年代に始まった兵器開発の流れから生まれました。当初、アメリカ軍はADM-20 クエイルに続く亜音速武装化囮（SCAD）を計画しており、このプロジェクトは敵の迎撃を回避するための無人[[航空機]]の研究を目的としていました。しかし1973年にこの計画は中止され、その際に開発された技術を活用する新たな提案が浮上しました。この提案に基づき、1973年7月から空中発射型の巡航ミサイルの開発が始まり、AGM-86Aが誕生しました。1975年には初の試験が成功し、1976年には完全な誘導飛行試験もクリアしました。

制式採用

AGM-86Aは初期型としては採用されず、続いてAGM-86Bが開発されました。この新型は全長を約2メートル延ばし、射程を拡大させました。1981年4月からAGM-86Bがアメリカ空軍に正式に引き渡され、主契約者はボーイングです。AGM-86Bは1986年まで生産され、合計1,715発が納品されました。

機体の特徴

ALCMのデザインは飛行機に似ており、主翼と尾翼が装備されています。胴体部分は平らな三角形状で、ミサイルとしては比較的大きなサイズを誇ります。ミサイルは発射後、主翼を展開して揚力を生む機構を持ち、姿勢制御は後部の水平尾翼で行います。上部には固定式の安定用垂直尾翼があり、ジェットエンジンの空気取り入れ口が設けられています。

運用可能な母機

ALCMを搭載できる航空機は主にB-52G/HとB-1Bです。両機ともに上限で 20 発のALCMを搭載可能ですが、実際にはB-52G/Hがメインの運用母機となっています。

発射のプロセス

ミサイルが発射されると、下部の主翼が展開され、地面から135メートルの高度に達します。その後、F107-WR-101ターボファンエンジンがスタートし、目標に向かって飛行します。AGM-86A/Bは慣性航法装置と地形参照航法装置（TERCOM）を使用し、事前に取り込まれた地形データを基に誘導しますが、AGM-86C/D型はこれに加えてGPSも用います。

派生型

AGM-86シリーズには核弾頭搭載型のAGM-86A/Bの他に、通常弾頭型のAGM-86C（CALCM）やAGM-86D（CALCM）も存在します。特にAGM-86Cは1986年から配備され、通常弾頭に切り替えて運用されています。これにより、より多様なミッションを遂行できるようになりました。

実戦での使用

AGM-86B型の核弾頭搭載は行われたが、実際には使用された経験はありません。一方、AGM-86C Block1は湾岸戦争や他の作戦で実際に使用され、高精度の攻撃を実現しました。特に湾岸戦争では85%の命中率を記録し、以降も様々な作戦で活用されています。

ALCMの開発と運用は、アメリカの軍事戦略において重要な位置を占めており、今後の技術革新にも注目が集まります。

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