AM-16 (航空機)

AM-16夜間偵察飛行艇

AM-16は、愛知時計電機航空機部、後の愛知航空機が大日本帝国海軍のニーズに応じて開発が試みられた夜間偵察飛行艇です。社内での名称として「AM-16」が付けられたものの、海軍に納入されることはなく、正式な名称は存在しません。開発は1936年から始まりましたが、急速な軍需の変化によって中止されてしまいました。

開発の経緯

愛知は1936年、海軍からの命令で十一試特殊水上偵察機の開発に取り組む一方で、独自に海軍向けの最新型偵察飛行艇の設計にも着手しました。特に、技術者の三木鉄夫が中心となり、1937年6月に試作機を完成させる計画が立てられていました。しかし、日中戦争の影響で軍の要求が変わり、より需要の高い九六式艦上爆撃機の生産に注力せざるを得なくなりました。こうした状況下で、AM-16の開発は1937年の中に艇体の完成まで達したものの、その後は進展しない運命を辿りました。

設計の特徴

AM-16は、双発の単葉飛行艇として設計されており、機体の胴体は全金属製である一方、主翼は木製骨組に合板と羽布が張られる形状を取っていました。このような設計は、軽量さと空気抵抗の軽減を意図したもので、アメリカのグラマン G-21などと近似の現代的なスタイルを反映しています。開発が進めば、高い航続性能を持つ飛行艇として名を馳せる可能性がありました。また、カタパルトを使った運用が計画されていることも注目に値します。

諸元

AM-16の計算値は次の通りです：

• - 全長: 11.80 m
• - 全幅: 15.00 m
• - 全高: 4.00 m
• - 主翼面積: 38.6 m²
• - 自重: 1,733 kg
• - 全備重量: 2,950 kg
• - エンジン: メナスコ C5S-4 スーパー・バッカニア 空冷倒立直列6気筒（最大300 hp） × 2
• - 最大速度: 243 km/h
• - 巡航速度: 130 km/h
• - 実用上昇限度: 5,550 m
• - 航続距離: 2,463 km
• - 武装: 7.7mm旋回機銃 × 1
• - 乗員: 3名

AM-16はそのまま開発が進むことがなかったものの、当時の技術的挑戦や構想を示す重要な事例として、今も航空機史にその名を残す存在です。また、資料としては、野沢正の著書『日本航空機総集 愛知・空技廠篇』には、AM-16に関する詳細な情報が収録されています。

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