AN/AWG-10

AN/AWG-10火器管制レーダー・システム

AN/AWG-10は、ウェスティングハウス・エレクトリック社が開発した先進的な火器管制レーダー・システムで、アメリカ海軍のF-4 ファントムII艦上戦闘機に搭載されています。このレーダーの一部はAN/APG-59と呼ばれ、パルスドップラー処理技術により実用的なルックダウン能力を備え、目標の発見と追尾に優れた性能を発揮します。

開発の経緯

1963年、ウェスティングハウスはF-4向けのAWG-10ミサイル・コントロール・システムの製造を受注し、1966年からは実際の引き渡しが始まりました。当初のAWG-10は要撃機用レーダーとして初めてトランジスタ回路を採用し、全天候対応の性能を持つレーダーシステムという新しい領域を切り開きました。

構造と機能

AWG-10はスパローおよびサイドワインダー空対空ミサイルの誘導を目的とした高精度な索敵および追跡データを提供します。このシステムは、従来の方式に比べて高い信頼性を誇り、パルスドップラー処理を利用したルックダウン機能を実現しています。さらに、ビルトイン・テスト（BIT）システムにより、リアルタイムでの自己診断が可能となっています。

改良と派生型

1973年にはウェスティングハウスがAWG-10の能力向上および信頼性向上を目的とした改修を行い、新たにAN/AWG-10Aと名付けられたシステムを生み出しました。この改良版では送信機が固体化され、クライストロン技術による増幅器が採用され、デジタルコンピュータも導入されました。これにより、レーダーはさらに高性能化し、使いやすさが向上しました。とりわけ、AN/AWG-10Aでは従来のレーダー要素に加え、6つの新しいユニットが導入され、それによってシステム全体の性能も大きく向上しました。

国際展開

AN/AWG-10はその能力から他国向けにも派生型が開発されました。例えば、英国向けにF-4KおよびF-4M用のAN/AWG-11およびAWG-12が用意されています。これらの派生型もAWG-10Aの改良を受けており、さらなる性能向上が図られています。

結論

AN/AWG-10は、アメリカ海軍における艦上戦闘機の火器管制レーダーとしての役割だけでなく、他国にもその技術が派生し、さまざまな形で航空戦力の一翼を担ってきたシステムです。先進的なパルスドップラー処理技術と全天候対応の性能は、近代の空中戦において不可欠な要素とされています。

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