AQUAシステム

AQUAシステムの概要

AQUAシステム（Accurate and QUick Analysis System for Source Parameters）は、防災科学技術研究所により開発され、2005年度から運用を開始した高精度かつ即時的な震源パラメータ解析システムです。このシステムは、地震の位置、マグニチュード、そして発震機構（メカニズム解）を迅速に推定し、その結果を公開することで、地震警報を実現しています。

特徴と運用の仕組み

AQUAシステムは、全国に分散設置された高感度地震観測網（Hi-net）や気象庁、さらには大学などのリアルタイムの観測データを基にした、自動処理システムです。特徴的な手法としては「最低2点でのP波到達時刻と他の観測点で未だ到着していないデータ」を用いる着未着法があり、この方式によって震源の即時決定が実現されています。また、2007年の改良により情報発信の即時性がさらに向上したため、改良前のシステムとは区別して「新AQUAシステム」と呼ばれることがあります。

AQUAシステムでは、震源の位置と規模を推定するだけでなく、発震機構についても同時に解析することが可能です。これにより、気象庁が運用している緊急地震速報（2007年から本格運用）にも深く関与しています。なお、AQUAシステムの推定結果は速報性を重視しているため、気象庁の速報とは異なる場合があり、誤差を含むことがあります。信頼性が低いと判断された場合は、情報の公開が行われないこともあります。

震源決定と規模推定のメカニズム

震源の決定は、2001年に開発された超即時震源決定システムを用いて行われます。このシステムでは、2点以上のHi-net観測点からのデータを活用し、RMS振幅が5000nm/s以上の震動が検出された時刻データのみを利用します。トリガー時刻から3秒から4秒後に15観測点以上でのデータが集まった段階で、最小二乗法を用いて震源決定計算を行います。すべての処理はトリガー時刻から約17秒以内に完了します。

震源の位置は、最大エネルギーを放出した地点として特定され、気象庁での破壊開始点とは異なります。規模の推定には、トリガー時刻直後のデータを利用して、モーメント・マグニチュード（Mw）を算出します。このモーメント・マグニチュードは、特定の計算式を用いて計算され、震源距離や深さなどのデータを基に算出されます。

発震機構とその解析

発震機構の解析は、前述の震源情報を初期震源として利用し、広帯域地震観測網（F-net）から得たデータを活用します。観測された波形に最も近い結果を導き出すことで発震機構を特定します。なお、初期震源解析結果は、実際の規模よりも小さく解析される傾向があります。これに対して、複数の解析方法、例えばMT解やグリッドサーチ法、CMT解などがあり、それぞれが異なるアプローチで発震機構の特定を行っています。

特に、CMT解は観測された地震波形を最もよく説明する震源パラメータを同時に求める手法であり、海域下での地震の深さ推定にも利用されています。これにより、Mw6.0以上の地震においては、ハーバード大学のCMT解と一致する結果が得られることが多く、国際的な標準として評価されています。

事例と展望

2011年に発生した東北地方太平洋沖地震では、AQUAシステムが発震機構の解析を行いましたが、正確なデータを得ることが困難でした。この教訓を受けて、AQUAシステムはM9クラスの解析に対してもさらなる改良が続けられています。地震観測において信頼性と精度を高めることは非常に重要であり、今後の研究と技術の進展が期待されます。

まとめ

AQUAシステムは、高精度かつ迅速な震源パラメータ解析を提供することで、地震警報システムにおいて重要な役割を果たしています。その機能の向上は地震による災害の減少に寄与することが期待され、今後もさらなる改善が求められています。

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