ASA-PS

ASA-PS（ASA身体状態分類システム）について

ASA-PS（ASA Physical Status Classification System）は、アメリカ麻酔科学会によって策定された患者の全身状態を評価するためのシステムです。このシステムは、手術前に患者がどの程度健康であるかを理解する助けとなりますが、手術リスクの単独の評価基準ではありません。

ASA-PSの歴史

ASA-PSは1963年に導入され、当初は6つのクラスに分類されるシステムとして設計されました。この分類は、患者の健康状態を簡潔に示すために使われ、特に手術のリスク評価における重要な役割を果たしています。手術が緊急の場合には、クラスの後に「E」を付け加えることで、緊急性を示すことができます。例えば、緊急手術が必要なクラス5は「5E」と表記されます。

ASA-PSの各クラスの詳細

ASA-PSは以下のように6つのクラスに分けられます：

• - Class Ⅰ：健康な個人。
• - Class Ⅱ：軽度の全身疾患を持つ患者。
• - Class Ⅲ：重度の全身疾患を抱えている患者。
• - Class Ⅳ：生命を脅かす全身疾患がある患者。
• - Class Ⅴ：手術なしでは生存が見込まれない瀕死の患者。
• - Class Ⅵ：脳死状態の臓器移植ドナー。

緊急手術に際しては、これらのクラスに「E」が付くことで、その緊急性が表されます。ただし、脳死患者からの臓器摘出は常に緊急で行われるため、クラス6は通常「6」とのみ表記されます。

改訂と適応

2020年には、この分類システムに対しさらなる改訂が行われ、小児や妊婦に関する具体例が追加されました。また、このシステムには糖尿病（DM）、冠動脈疾患（CAD）や高血圧（HT）などの略語が用いられ、患者の健康状態をより的確に示す手段として進化を続けています。

ただし、このASA-PSはあくまで患者の全体的な健康状態を示すものであり、手術に関わる全てのリスクを考慮したものではありません。手術リスクを評価する際には、年齢、併存疾患、手術の性質、麻酔方法、手術に関わる医療チームの経験、術後ケアなど、さまざまな要因も重要です。

ASA-PSの誤解とその重要性

麻酔科医はこのASA-PSを使用しますが、他の医療機関では誤解されて手術リスクを決定する基準になることがあります。患者にとって、これは手術を受けるべきかどうかを左右する情報になり得るため、その解釈には注意が必要です。

歴史的背景と発展

1940年代初頭、ASAは手術リスクの予測因子を調査するための委員会を設置しました。当時、医師たちは手術リスクを標準化し、分類することに挑戦しました。彼らは身体的状態に基づいて患者を判断することが最も効果的であると結論づけ、これに基づいたシステムが65年の時を経て現在の形式に至りました。

最初の提案は、健康な人から生命に危険を及ぼす病気を持つ人まで6つの段階に分かれており、今日の分類に近い内容を持っていました。1963年には現在の形式が発表され、手術リスクの理解や管理に重要な役割を果たす分類システムとして広く認識されることとなりました。

まとめ

ASA-PSは、患者の健康状態を評価し、手術リスクを理解するための基本的なツールです。その活用にあたっては、他のリスク要因と併せて総合的に評価することが重要であり、誤解や誤用を避けるための意識が求められます。

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