ASCOD歩兵戦闘車

ASCOD歩兵戦闘車について

ASCOD歩兵戦闘車（Austrian Spanish Cooperation Development Infantry Fighting Vehicle）は、オーストリアとスペインが協力して開発した履帯式の装甲戦闘車両のシリーズです。オーストリアのシュタイア・ダイムラー・プフ社とスペインのサンタ・バルバラ・システマス社が共同契約を結び、これを基にした様々な型が設計されました。この車両は、オーストリアでは「ウラン」と呼ばれ、スペインでは「ピサロ」と称されます。

開発の背景

ASCODの誕生は、オーストリアとスペイン両国の陸軍が老朽化したM113装甲兵員輸送車を新しいモデルで代替する必要に迫られたことに端を発します。ウランは、オーストリアの重戦車であるレオパルト2A4の支援役として期待されており、国際的な低強度紛争や非対称戦においても有効な運用が見込まれています。

1992年にはASCODのプロトタイプが完成し、4年後には量産が開始されました。スペインのピサロ計画は、同国の旧式装備を更新するための一環であり、オーストリア陸軍も同様に装備の刷新を図りました。オーストリアは112両、スペインは144両のASCODを導入しました。

武装と装甲

ASCODの基本型にあたる歩兵戦闘車型は、30mm機関砲MK30-2を備えた電動全旋回砲塔を搭載しています。この砲は最大毎分800発を発射でき、さらに同軸に7.62mm機関銃も装備しています。ASCODの装甲は500mの射距離からの14.5mm弾を防御可能で、全周的に7.62mm弾に対する防護性能を持っています。

加えて、ASCODは複数の発煙弾発射機を備え、運用中の防護能力を向上させます。ピサロは一部に爆発反応装甲を搭載し、さらなる改良の余地も持っています。

動力系と駆動系

ASCODは、ディーゼルエンジンを搭載しており、ピサロには600hpのエンジン、ウランには720hpのエンジンが搭載されています。最高速度はピサロが70 km/h、ウランが巡航速度で50 km/hを誇ります。全輪駆動の油圧機械式変速機により優れた操作性も持ち合わせています。

派生型と運用状況

ASCODは多くの派生型を持ち、指揮車両型や回収車両型、工兵車型、さらには軽戦車型や自走榴弾砲型などが存在します。このため、様々な運用ニーズに応えることが可能です。

2023年現在、オーストリアはウランを112両保有し、スペインも356両のピサロを装備しています。他にもラトビアやタイ、フィリピンなど、複数の国で運用されています。特に、イギリスはASCOD SVという新たな派生型を設計中であり、将来的な展望も期待されます。

ASCOD歩兵戦闘車は、両国の技術力を結集した革新の象徴であり、今後もその性能向上と多様な派生型の開発により、さらなる進化が期待されています。

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