ASRAAM (ミサイル)

ASRAAM（アスラーム）

ASRAAM（Advanced Short Range Air-to-Air Missile）は、イギリスが開発した赤外線誘導の空対空ミサイルで、特に短距離戦闘において高い性能を発揮します。このミサイルの開発は1980年代にさかのぼり、NATO加盟国の協力の下で行われ、アメリカのAIM-120 AMRAAMとともに次世代の空対空ミサイルとして位置付けられました。

開発の背景

ASRAAMの本格的な開発は1992年に始まりましたが、このプロジェクトは途中で様々な困難に直面しました。旧東ドイツから受け継いだMiG-29に搭載されていたR-73（AA-11 アーチャー）がもたらした機動性能への関心が高まり、ドイツ側はASRAAMにR-73を超える機動性を望んでいました。しかし、イギリスは射程の延長を重視し、両国はまとまった意見を形成できませんでした。その結果、ドイツはASRAAMプロジェクトから撤退し、IRIS-Tの開発に着手しました。

このような事情の中で、アメリカは早々にサイドワインダー（AIM-9X）の改良を進めることとなりました。ASRAAMのシーカーには、ヒューズ社のフォーカル・プレーン・アレー（FPA）が採用され、赤外線画像誘導により高い感度を実現しています。このシーカーは、高度な抵抗対策やオフボアサイト・ロックオン機能を備えており、特定のターゲット部分を狙うことも可能です。

特徴と性能

ASRAAMは、サイドワインダーやIRIS-Tなどの他の同型ミサイルに比べて、弾体の幅が広く、その結果として強力なロケットモーターを持つため、高い射程を実現しています。また、発射後ロックオン（LOAL）能力も備えており、将来的にはF-35 ライトニング IIに搭載される可能性があります。

ただし、現時点ではF-35の外部パイロンに取り付けることが計画されており、内部ウェポンベイには搭載されない見通しです。戦闘機に搭載する際には、サイドワインダーとの互換性が考慮されています。

今後の展開

2007年には、イギリス国防省が新たな短距離防空ミサイルシステムの開発に資金提供を実施しました。この新システムは、ASRAAMの部品を共有する設計となっています。新たなASRAAMブロック6は、2022年から2024年にかけて様々な戦闘機で運用が開始される計画で、新しいシーカーや冷却システムの採用によってさらなる性能向上が期待されています。

この新型シーカーはイギリス国内で製造され、アメリカの運用規制を受けずに販売が可能となる見込みもあります。

運用国

ASRAAMはイギリス空軍に加え、インド空軍やカタール空軍、アラブ首長国連邦空軍でも運用されています。イギリスではトーネード、ハリアーII、タイフーンに導入され、F-35 ライトニング IIの運用でも共同で利用されています。インドではSu-30MKIがASRAAMを搭載し、各国での実績が示す通り、その運用は国際的にも広がっています。

ASRAAMは、近接戦闘における空中戦力を強化するための重要な武器システムとして、今後も様々な進展が期待されるミサイルです。

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