IRIS-T

IRIS-T（アイリスティー）

IRIS-Tは、ドイツのディール・ディフェンス社、スウェーデンのSAAB社、イタリアのアレニア社が共同で開発した短距離空対空ミサイルです。その名称は「Infra Red Imaging System Tail/Thrust Vector-Controlled」の略で、赤外線画像システムと推力偏向制御を特徴としています。初期の開発は1980年代に始まりましたが、ドイツの再統一後、他国の技術と競合しながらその設計が進められました。

開発の経緯

1980年代末、西ドイツはAIM-132 ASRAAMの開発パートナーとしてプロジェクトに参加していましたが、再統一以降にAA-11 アーチャー（R-73）の能力を評価した結果、ASRAAMにおける運動性に疑問を持つようになりました。最終的に、ドイツは1990年にこのプロジェクトからの離脱を決定し、自国開発のIRISを提案しましたが、ドイツ空軍はこれを受け入れず、その後、ディール・ディフェンス社は独自にIRIS-Tの開発を進めることにしました。1995年には正式にその計画が承認され、同年には国際的な開発協力が始まりました。

技術的特徴

IRIS-Tは、AIM-132 ASRAAMやアメリカのAIM-9Xと技術的に類似している点が多く、主に以下の2つの点で前任者である第3世代サイドワインダーと異なります。

1. 赤外線画像誘導システム：IRIS-Tは128ピクセルの線型アレイ方式を採用しており、高い精度を持つ誘導システムを備えています。
2. 推力偏向制御：尾部制御による機動性の向上や、赤外線妨害に対抗する能力の強化が図られています。

これにより、IRIS-Tはオフボアサイト射撃が可能であり、従来の発射前ロックオン（LOBL）の他に、発射後ロックオン（LOAL）能力も有しています。これにより、戦闘機上のヘッドマウントディスプレイ（HMD）を利用して、より広範囲での交戦が可能になっています。

運用状況

2011年までに約4,000発の生産が計画され、現在、複数の国で運用されています。現在の運用国にはオーストリア、ベルギー、エジプト、ギリシャ、イタリア、ノルウェー、サウジアラビア、南アフリカ共和国、スペイン、スウェーデン、ウクライナが含まれます。これらの国々では、主にユーロファイター タイフーン、F-16、NASAMSなどに搭載されており、効果的な防空システムとなっています。

派生型と今後の展望

IRIS-Tにはいくつかの派生型が存在し、潜水艦発射式対空ミサイルであるIDAS、地上発射型のIRIS-T SLなどが開発されています。それぞれの型は、特定の運用シナリオや防空ニーズに基づいて設計されており、短距離防空ミサイルのIRIS-T SLSや中距離ミサイルのIRIS-T SLMなど様々なバリエーションが存在します。

このように、IRIS-Tはその運用性や技術的特徴から、今後の空対空ミサイルとしても期待される存在となっています。各国の空軍が採用し、さらに進化を続けることで、未来の戦場において重要な役割を果たし続けることでしょう。

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