ATAC

ローマの公共交通を担うATAC

ATAC（アタク）は、イタリアの首都ローマの公共交通機関を運営する企業です。かつては「ローマ市の路面電車とバスの会社」を意味するアクロニムでしたが、現在は「ローマのバス、鉄道、路面電車を扱う会社」として、市内の公共交通を包括的に担っています。

多岐にわたる運行路線

ATACは、地下鉄、都市鉄道、トラム（路面電車）、バスという多様な交通手段を運営しており、ローマ市民の日常生活に欠かせない存在です。具体的な路線は以下の通りです。

地下鉄 (Metro)
A線：アナニーナ駅 - バッティスティーニ駅
B線：ラウレンティーナ駅 - レビッビア駅 / コンカ・ドーロ駅
C線：建設中
都市鉄道 (Ferrovie ATAC)
ローマ＝リード線
ローマ＝ジャルディネッティ線
ローマ＝チーヴィタ・カステッラーナ＝ヴィテルボ線
トラム (Tram)
2系統：フラミーニオ広場 - Piazza Mancini
3系統：Piazza Thorvaldsen - ローマ・トラステヴェレ駅
5系統：ローマ・テルミニ駅 - Piazza dei Gerani
8系統：ヴェネツィア広場 - Via del Casaletto
14系統：ローマ・テルミニ駅 - V.le Palmiro Togliatti
19系統：Piazza Risorgimento - Piazza dei Gerani
バス
市内各所に路線網を張り巡らせています。

歴史

ATACの歴史は1909年に、AATM（自治体路面電車会社）として設立されたことに始まります。その後、ATM（自治体路面電車）に名称を変更し、1911年には最初の営業を開始しました。当初は市電路線網を運営していたSRTOとは区別して路線番号がローマ数字で採番されていました。その後、1919年にATMはSRTOの機材と路線を段階的に吸収し始めました。

1926年には、ローマがコムーネから政府直轄区となったため、ATMはATGと改称しました。さらに、2年後に最初のバス路線を開設した際、ATGからATAG（政府路面電車・バス会社）へと改称しました。1929年には、一路線のみを運営していたSRTOが廃止され、その全機材がATAGに引き継がれました。1930年には路線網の再編が行われ、歴史的中心部にある路面電車路線が廃止され、バス路線が強化されました。この再編で、市内環状線から郊外環状線へと放射状に路線が構築され、郊外の路面電車駅からバス路線が展開するという、その後のローマの路線網の特徴が作られました。

1937年には、トロリーバスの運行も開始されました。第二次世界大戦後、独裁政権が崩壊し、市の管理がコムーネに戻るとともに、ATAGはATACへと改称しました。戦後、ATACは路線網と車両基地の再建という困難な課題に取り組み、1947年から徐々に路線の復旧を進めました。1950年代には、トロリーバス網の拡張や路面電車の縮小が行われました。1960年のオリンピック開催時には、多くの路面電車線が廃止され、バス路線へと切り替えられました。

1972年には最後のトロリーバス路線が廃止され、路線網はバスが中心となりました。2000年には、ATACは車両、路面電車、トロリーバスの設備のみを維持し、商業的な運営は外部に委託されることになりました。その後、ローマの主要路線はトラムバスに譲渡され、一部の路線は第三の会社が運営しています。

2006年には、歴史的な所在地を手放し、有料駐車場所を運営していたSTAを吸収し、ローマの移動手段を独占的に管理する機関となりました。現在、ATACは駐車場、信号、優先車線、路面電車の運営など、公共交通に関する幅広い業務を担当しています。

ATACは、ローマ市民にとって不可欠な公共交通機関であり、その歴史はローマの都市発展と密接に結びついています。今後も、ローマの交通インフラを支える重要な役割を担っていくでしょう。

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