ATLAS検出器

ATLAS検出器とその実験

ATLAS検出器（A Toroidal LHC ApparatuS）は、スイス・ジュネーブのCERNに設置されている実験装置の一つで、地下約100メートルの深さに位置します。この装置は、LHC（大型ハドロン衝突型加速器）を用いて加速された陽子ビームが衝突する様子を検出し、発生するさまざまな粒子を測定するためのものです。寸法は高さ25メートル、全長46メートル、重量約7000トンと、大型の汎用粒子検出器です。ATLASは、世界中から集まった3000人以上の物理学者が参加する大規模な国際研究プロジェクトでもあります。

ATLAS実験の目的

ATLAS実験は、主に標準模型と呼ばれる理論に基づいて粒子物理学の研究を行っています。具体的には、以下のような物理プログラムに焦点を当てています。

• - 電弱宇宙の測定: WボソンやZボソンといった粒子の質量や相互作用を精密に測定します。
• - トップクォークの研究: この重い粒子の質量や性質を調査します。
• - 量子色力学（QCD）の研究: 粒子間の力の性質や、ジェットの内部構造についての精密測定を行います。
• - ヒッグス粒子の探索: 2012年に発見されたヒッグス粒子に関連する研究を進め、粒子の性質を調査します。
• - 新物理の探索: 標準模型の枠を超えた、新しい粒子や現象を探る研究が行われます。

ATLAS実験は、標準模型内の希少現象を探索することも重視しており、その一環として超対称性粒子やダークマターの候補粒子の探索も行います。

検出器の構造と機能

ATLAS検出器は、異なる機能を持つサブ検出器が円筒状に配置されており、粒子が衝突する中心を取り囲んでいます。主な構造は以下の通りです。

• - 内部飛跡検出器: 衝突点に最も近く、荷電粒子の飛跡を記録します。シリコン半導体デバイスを使用したピクセル検出器と、ドリフトチェンバーがあり、粒子位置を高精度で測定します。
• - 超伝導ソレノイド磁石: 磁場を提供し、粒子の運動量の測定を助けます。
• - 電磁カロリーメーター: 光子や電子のエネルギーを測定する装置で、液体アルゴンと銅を使用しています。
• - ハドロンカロリメーター: 荷電ハドロンのエネルギーを測定し、電磁カロリーメーターと連携します。
• - ミューオン検出器: ミューオンを検出するための最外層の装置で、特定のガスチェンバーで構成されています。

データ収集と解析

ATLASでは、毎秒多数の衝突が発生し、その中から重要なデータを選別して収集するために、高度なトリガーシステムが使用されます。トリガーシステムは、ハードウェアとソフトウェアによる二層構造で構成されており、必要なデータのみを抽出します。この選別後、データはCERNのコンピュータークラスターで処理され、物理解析を行うために各国へ分配されます。

主要な成果

ATLASは、標準模型の精密測定やヒッグス粒子の測定、新物理の探索において重要な成果を上げています。特に、2012年に発見したヒッグス粒子は、標準模型の予測を裏付けるものであり、その性質も正確に測定されています。また、ATLASとCMSという対照的な検出器による結果の一致が、実験の信頼性を高めています。

ATLAS実験は、粒子物理学の最前線で活躍し続け、宇宙の根本的な構成要素についての理解を深める重要な役割を果たしています。

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