AV人権倫理機構

AV人権倫理機構とは

AV人権倫理機構（Adult Video Human Rights & Ethics Organization）は、アダルトビデオ（AV）業界の健全な発展を目的として設立された、日本の非営利の任意団体でした。2024年3月31日をもって活動を終了しています。

設立の背景

AV業界における人権侵害問題が深刻化する中、2016年には国際人権NGOヒューマンライツ・ナウがAV出演強要に関する調査報告書を発表しました。これを受け、内閣府男女共同参画会議も対策に乗り出し、スカウトの取り締まり強化などの緊急対策が決定されました。

こうした状況を受け、業界内の主要団体が連携し、第三者委員会としてAV業界改革推進有識者委員会が設立されました。そして2017年10月1日、その業務を引き継ぐ形でAV人権倫理機構が発足しました。

活動内容

AV人権倫理機構は、AV業界の団体ではなく、法務実務・研究者の第三者団体として、事業者への法務監督を行っていました。具体的な活動としては、以下の点が挙げられます。

業界への助言: 事業者から意見を求められた際に、外部の立場から助言を行いました。特に、メーカーとAV女優間のギャラ配分について、透明化を促す指導を行いました。
人権保護: AV女優が自由な意思決定で出演できる環境を担保するため、AV人権倫理機構の外局としてAVAN（旧：表現者ネットワーク）を設置し、契約書類の保管や二次利用報酬に関する業務を行いました。
業界への提言: 会員に向けて、成人年齢引き下げに伴う18歳でのAV出演解禁の増加を懸念し、出演年齢を20歳以上とするよう強く推奨する通達を出すなど、業界全体の倫理向上に努めました。

活動の評価と課題

ライターの中村淳彦氏は、AV人権倫理機構の設立によって業界の意識改革が進み、出演被害が激減したことを評価しています。一方で、適正AV以外の仕事を規制したことによる、同人AVへの敵対意識の強まりといった弊害も指摘されています。

活動終了の理由

AV人権倫理機構は2024年3月31日をもって活動を終了しました。活動終了のお知らせによると、「適正AV」の使用終了や、知的財産振興協会の改組を巡り、後継団体である適正映像事業者連合会との間で方針の食い違いが生じたことが理由として挙げられています。

機構が行っていた作品の販売停止業務や、出演者に対する二次使用料の支払い業務は、今後、適正映像事業者連合会に引き継がれる予定です。

沿革

2017年4月1日 - AV業界改革推進有識者委員会が発足
2017年10月1日 - AV人権倫理機構が発足
2018年3月26日 - 日本映像ソフト制作・販売倫理機構、第二プロダクション協会が正会員として入会
2018年6月11日 - コンピュータソフトウェア倫理機構が正会員として入会
2019年6月4日 - AVANを外局化
2022年3月23日 - 出演年齢を20歳以上とすることを強く推奨する通達
2024年3月31日 - 活動終了

関係者

代表理事：志田陽子（武蔵野美術大学教授、憲法学者）
理事：河合幹雄（桐蔭横浜大学教授、法社会学者）、山口貴士（弁護士）、歌門彩（弁護士）

まとめ

AV人権倫理機構は、短期間ながらもAV業界の健全化に一定の貢献を果たしました。その活動は終了しましたが、残された課題は、後継団体によって引き継がれ、AV業界のさらなる発展に繋がることが期待されます。

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