Acme (テキストエディタ)

Acmeは、Plan 9 from Bell Labs (Plan 9) オペレーティングシステム (OS) のテキストエディタであり、グラフィカルなシェルとしても機能するユニークなアプリケーションです。ロブ・パイク氏によって設計・実装され、テキスト編集とシステム操作を統合したインターフェースを提供します。

特徴

コマンド言語: samテキストエディタのコマンド言語を基盤としており、強力なテキスト処理能力を持っています。
インターフェース: Oberonという別のシステムの影響を受けており、効率的で視覚的な操作を目指した設計です。
9Pサーバ: 他のエディタとは異なり、9Pファイルサーバとして動作します。これにより、他のシステムとの連携が容易になり、より柔軟な運用が可能となります。
マウスコード: 特筆すべきユーザインターフェースの特徴として、マウスの複数のボタンを同時に押すなどして様々なコマンドを実行させるmouse chording（マウスコード）という操作方法があります。これにより、キーボード操作を最小限に抑えつつ、複雑な操作を直感的に行うことができます。

多機能性

Acmeは、単なるテキストエディタに留まらず、電子メールクライアントやニュースクライアントとしても利用できます。また、wikifsのフロントエンドとしても機能し、これらの機能はAcmeが持つファイルシステムインターフェースを通じて外部コンポーネントと連携することで実現しています。これにより、Acmeをシステムの中核として、さまざまなタスクを統合的に扱えるようになります。

移植性

Acmeは、Infernoオペレーティングシステムにも移植され、Infernoの標準的なディストリビューションの一部として提供されています。Infernoは、他のOS上でアプリケーションとして動作するように設計されているため、Inferno上で動作するAcmeは、Microsoft WindowsやLinuxといった様々なOS上で利用できます。さらに、acme: stand alone complexというプロジェクトでは、AcmeとInfernoをパッケージ化し、スタンドアロンのアプリケーションとして動作させる試みがなされています。

また、Unix系OSで動作するAcmeの移植版がPlan 9 from User Spaceというプロジェクトで提供されています。このプロジェクトは、Plan 9の様々なプログラムの移植版を集めたもので、このバージョンもLinux上で動作可能です。いくつかのLinuxディストリビューションには、この移植版が含まれています。

関連情報

Plan 9 from Bell Labs: Acmeが生まれたオペレーティングシステム。
wmii: Acmeの設計思想に影響を受けて開発されたウィンドウマネージャ。
外部リンク:
Rob Pike氏によるAcmeの紹介記事 (1994年): "Acme — A User Interface for Programmers"
acme(1), acme(4) のマニュアルページ
Plan 9 from User Space: Plan 9のプログラムをUnix系OSに移植したプロジェクト
acme stand alone complex: Inferno版Acmeを様々なOS向けにパッケージ化したプロジェクト。IRCクライアント、ウィキクライアント、ウェブブラウザ、デバッガなどを含む。
http://acme.cat-v.org: Acmeに関するリソース
* 'Help': A Minimalist Global User Interface by Rob Pike: ロブ・パイク氏がAcmeに先駆けて開発したユーザーインターフェース。多くのアイデアがAcmeにも引き継がれています。

Acmeは、その独特なインターフェースと強力な機能を備えた、プログラマーにとって非常に興味深いエディタです。テキスト編集だけでなく、システム操作や様々なツールの統合プラットフォームとしても活用できる可能性を秘めています。

もう一度検索